引き攣った笑顔 ページ1
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聞こえてくるAちゃんの声が、左から右に抜けていく。
なぜだか泣きそうなのに、それが気にも留まらなかった。
予想通り、LINEを送ってきたのは康二。
SnowManのグループLINEで、
[クリスマスなのにボッチ!寂しいわあ]
って、写真付きで送られていて。
めめが、
[どんまい。行こうか?]
って、たった今返信した。
優しいねえ、俺なら絶対行かないけど。
でも、今重要なのはそんな事じゃなくて。
たった今入ってきた康二のLINEのすぐ下。
LINEの通知バーナーの所に、
少し前まで見慣れていて、渇望していた人のアイコンが並んでいて。
「……えーっとねえ、」
Aちゃん、なんて言ったっけ。
適当に相槌を返しながら、彼女から、……。
小雪さんからきたLINEメッセージを凝視する。
こっちから連絡することはあっても、あっちからなんてなかったのに。
それも、ホテルのお誘いじゃないのに。
あれから、気まずい感じで別れてひとつも連絡なんか取っていない。
初めてのLINE。
【辰哉。レンアイごっこ、楽しい?】
頭の芯が、冷えていく。
それなのに、どこか対照的に熱くなって。
……手のひらで転がされてる。
せっかく、小雪さんのことを忘れるために一歩踏み出したのにこれか。
そう思いながらも、Aちゃんの声が被さる。
「…深澤さん、」
咄嗟に、通知のバーナーを隠すようにスライドして消した。
付き合ってるんだから、小雪さんの連絡先消さなきゃだよね。
「ん、あぁ。なんだったっけ?」
「……明日のご飯だよ。」
……出来ない。
無理だ、今の俺に小雪さんを消すなんて。
開いた小雪さんのトーク画面、既読ついちゃったよ、って焦ってしまう。
そのままブロックすれば楽だし、傷つかなくて済むし、
それになによりAちゃんも安心なのに。
「明日のご飯ねえ、…んー」
考えられない。
ごめんね、Aちゃん。
何も知らないであろう彼女の目を見れずに視線を下に落とすと、
「あは、」
って。
どこか諦めたようなため息混じりの笑い声が聞こえて、思わず視線を戻した。
見えていなかった彼女の笑顔は、なぜだか引き攣っていた。
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ayaka(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。前作からnecoさんの作品が大好きで、日々の活力になってます!数時間おきに更新されてるか確認してしまうくらい生活の1部になってます🥹大変かとは思いますが、最後まで楽しみにしてます!! (2月9日 23時) (レス) id: d413d8c2c2 (このIDを非表示/違反報告)
ガリリョ(プロフ) - 辰哉君とは幸せになれないんだね😭😭😭 (2月9日 12時) (レス) id: c4caf972cd (このIDを非表示/違反報告)
neco(プロフ) - まーさん» 2度目のコメント、嬉しい限りでございます( ; ; )🩵 お互い大事にしているのに、きっと愛し方が違ったからこその相互が生まれてしまって、両方引くに引けないところまで来ていて…。小雪さんが好きで、でも主ちゃんも大事、なんていう絶妙なバランスです…。 (2月8日 11時) (レス) @page39 id: fcbd2b4e2b (このIDを非表示/違反報告)
まー(プロフ) - 2度目のコメントすみません😭涙が出てきました...深さんの主ちゃんへの気持ちめちゃくちゃ伝わります...😭お互い大事に思っているのに、何故こんなことにってめちゃくちゃ悲しいです😭ほんと、報われて欲しい😭😭 (2月7日 17時) (レス) @page37 id: 936cda87a6 (このIDを非表示/違反報告)
neco(プロフ) - korokoroさん» korokoro様、いつもありがとうございます、お久しぶりです!( ; ; )korokoroさんの知りたかった所がどこなのかを知りたくてウズウズしちゃいます(笑)個人的に、康二→主ちゃんの矢印を『最後』には深澤さんが知っていた、というのがミソです(言っちゃう) (2月6日 21時) (レス) id: fcbd2b4e2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:neco | 作成日時:2024年1月25日 22時