【騙しではない】Side 白雪 ページ7
白雪がこの場を去ろうと背を向けた時だった。決して白雪の腹の虫ではない、後ろに座る先ほど言葉を交わしたばかりの人の腹だ。
(それにしても、盛大だ)
一体どのくらい食べていないのだろう、と考えていると後ろに引っ張られる感触があった。どうにも、腹を鳴らした人物が白雪の服を引っ張っているらしい。
「なんですか?」
『立て続けにすみません、美味しくて安い飯屋ってありますか。』
振り返った白雪は、ちょうど立ち上がりながらそう聞く人が目に入る。
(あ)
「…美味しいかは分かりませんが、タダで食べられる所を一つだけ紹介できますよ。」
『本当ですか、それは助かりました!タンバルンには何回か来たことあるんですが、まさかこの辺にタダ飯を頂けるところがあるとは…。』
顔は隠れているため分からないが、飛び切り明るくなった声色に白雪は安心するが、同時に少しだけ罪悪感が湧く。
「では、着いてきて下さい。…えっと」
『……名前ですよね。俺はAといいます。』
「Aさん。私は白雪です。」
『白雪さんですね、飯屋までですがよろしくお願いします。』
「はい、分かりました。」
飯屋までではないんだけどね、と心の中で苦笑いする白雪は、Aを背に連れて自分の店、兼自宅へと戻った。
ーーーーーーー
案の定、と言ってもいい。
白雪の家を見上げたAは呟くように問う。
『……飯屋ですか?』
「違います。」
『何処でしょうか。』
「私の家ですね。」
『何故でしょうか。』
白雪は用もなく、家に連れて来たりした訳ではない。ちゃんと理由あっての事だ。
さっきAが立ち上がった時、一瞬だが痛そうにふらついた。それに、所々擦りむいたりしている、古いものではなく新しいものだ。
白雪はそれらの傷を治療するために連れてきたのだ。
「Aさんは、所々怪我をされていますね?」
『え、あ、まあ。そうですね。』
「それを治療するために連れてきました。ご飯も出しますし、寝床も貸します。」
『え、いやいや。いいですよ、そんなお世話になれません。』
とにかく治療を受けてもらわないと気が済まず、遠慮を続けるAを無視して家に押し込んだ。
『いいですってばあああ!!!!』
日が落ちていくタンバルの街中、一人の薬剤師が乱暴に人を引きずる姿が見られたとさ。
「とりあえず、そのローブを脱いで貰えませんか。」
自室に上がらせることに成功した白雪はAを背もたれのある椅子に座らせるとそう言った。
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りなーる(プロフ) - 更新待ってましたぁぁ!ありがとうございます!また楽しみにしてます! (5月29日 23時) (レス) @page39 id: fcaf0d8ff7 (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - ゼン落ち探してたのでとても嬉しい作品です!更新とても楽しみにします!頑張って下さい! (2018年9月4日 0時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)
漫画大好き少女(プロフ) - 私も思ってました!流石にオビオチが多すぎてゼン落ち探してましたよ〜w (2018年2月21日 19時) (レス) id: 412f05bc98 (このIDを非表示/違反報告)
はいざそう(プロフ) - コメントありがとうございます!ですよね、ゼン落ち少ないです…これを機に!とは言いませんが、ゼン落ち増えてくれたらなあと思ってます。見てくださる皆さんの為に頑張りたいと思います、励みになりました!ありがとうございます。 (2017年12月26日 23時) (レス) id: 3f8fc48687 (このIDを非表示/違反報告)
(。ゝωσ)シャラッ☆(プロフ) - はじめまして!ゼン落ちが少ないっていう話私も同意見です!! 書こうかなと思っていたんですけど書くネタがなくて更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2017年12月26日 20時) (レス) id: 0de7fe527f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はいざそう | 作成日時:2017年11月25日 18時