側近さんの不透明な踊り

【冬の若草】 ページ32

白息が夜闇に舞い上がっては溶けていく

体内に熱を溜めているからこそなのか、寒気とは違う繊維や袖の隙間から入り込む外気の寒さに自身の意図とは関係なく身震いを起こす。

気も、力も抜けて震える自分をおぶった広い背中がもう少しだ、と励ました。いくら体力があるとはいえ疲れているだろうに、駆け足で木々の中を滑り抜けてゆく様は心配しているみたいだ。

いや、心配されているのだろう

いくら壁を作り合っても、本心を隠し合っても、何度も背中を預け合ったのだ。
それが存外居心地の良いものだと知れば戻れなくなるのは必然だろう。

ごめん、熱が徐々に上がるのを感じながら息を吐くようにつぶやいた。

何に謝ったのか

今手を煩わせていることだろうか

優しいこの人を未だに信じたくないと意固地になっていることだろうか

それとも置いてきた片割れを裏切るみたいだからだろうか。

きっと全部だ

この人の負担になるのが嫌で

張った気が抜けて無防備に熱を出したにもかかわらず、まだ頼ることが守られることが怖くて

熱くなったような気がするピアスに、片割れの顔を思い出し、罪悪感が湧いて


朦朧とした頭で、次は意味もなくごめん、と聞こえないように呟く。
すると何故か若草色の瞳が横目で自分を見やり、口を開けた。

「赦してあげる」

得意気な笑みで言ってのけてしまうこの人の顔がぼやける。

それは熱に浮かされたせいだと、目尻から零れそうになった熱い水滴をこの人の肩に押し付け、回した腕に力を込めた。

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