側近さんの不透明な踊り

【運命の色】Side 白雪 ページ20

「…ありがとう」
ラジが去った後の室内、白雪は後悔の念が篭ったままだった為か、声が小さくなってしまう。

「なんだ、白雪。何で正座？」
ゼンは椅子に腰を掛け、小瓶に入った解毒薬を飲むとそう言った。
「力を貸してくれて…けど、ごめんなさい。私は…ゼンの毒にしかならなかった。」
(現にこうして、ゼンたちを巻き込んでしまっている)

「それは…笑うところか？俺が口にした毒の林檎とおまえが同じ赤だからとか、そういう？」
気力のない笑いになんか違う、と言わざるおえない。


『白雪、謝ることなんてないだろ。そもそもここに引きずり込んだのは俺だし、毒を食いにいったのはゼンだ。』
な？とウィンクしたAに白雪は頬が綻んでしまう。

「開き直ったな？」
『いい結果、いい過程だったから今回は反省しないでおこうとな』
「何処が、お前は反省しろ」
『はは、木々、あれ教えてやれよ』
会話をしながらも、ゼンは小瓶に残った分をAに押し付け、返されを繰り返している。

「ああ、ミツヒデがゼンが死んだら俺は死ぬって涙目になったこと」
『それそれ』
「あっ何でいうんだよ！」
「分かった分かった！反省してるよ、その、悪かったな。……今度からはミツヒデに剥いてもらって食うからさ…」
「そういう話か、今の！？」

ミツヒデを無視して、ゼンは今度こそ小瓶を飲み干すと、腰掛けた椅子から立ち上がり白雪の前でしゃがむ。

「白雪、俺が森で言ったこと覚えてるか」

忘れられないあの言葉に頷けば、柔らかく笑む。

「俺としては今お前といることは、運命の方だと嬉しいんだけどな？」
『だな。…俺はさ、白雪と初めて会った時運命を感じた、だから連れてきたんだ。』
ゼンの後ろから現れたAはくしゃりと白雪の髪を混ぜた。
(望んでくれている、ゼンが、Aが)

Aの手が、いつもより嬉しくて、気恥しいと感じる。

「お前と俺らの今日がこの場限りの毒か、これからの繋がりか、お前が決めればいい」
Aの手が離れ、それを追うとゼンのいう運命の色と目が合う。

「……ゼンって」
「何だ？」
「やっぱり凄い考え方するね」
「考え方じゃなくて、生き方ですがね」

そう言ってゼンは立ち上がり、白雪の前に手を差し出す。先程の嫌なものでも毒でもない、それは

「お前の答えは？ 白雪」

それは、繋がっていくものだ

「私は…」
伸ばした手のひらに、ゼンの熱が伝わってくる。
白雪は握ったのだ、赤い赤い運命を手繰り寄せるように。

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