淡く溺れて。2

60 ページ10

..









なんだかあったかくて、すごく落ち着く

なんだろう、この感じ…？









.







.








「ん…」



朝だろうか、部屋に日差しが差し込んで目が覚める



あれ…？私、いつのまにか眠って…






そう思って体を起こせば、自分の部屋ではないことに気づく






「ここ…」





見覚えのある寝室、壁


すぐに、彼の家だとわかった









寝室から出て、リビングへと向かうとソファに横になっている剛典






そうだ、私…

どれくらいの時間が経ったのか分からないけれど

自分に起きたことを思い出す







泣くの我慢してた私を…安心させるように抱き締めてくれたんだった







「…ごめんね……」



剛典を振ったばっかりなのに胸を借りちゃった

私、最低だよね






気づけば手を伸ばして、剛典の頬に触れる









剛「なに？襲いに来た？」



悪戯に笑う剛典を見て、なんだかほっとしてしまう



「いつから起きてたのよ」

剛「いーま」







もしかして…気つかってソファで寝てくれたのかな

そんなことを考えて、どこまで優しくなったの、

なんて思ってしまう









剛「具合、悪くない？」





おでこに手を当てられて、思わず体がビクっと反応してしまった





剛「あ…ごめん」


「ううん、大丈夫」






多分それは、昨日直人さんに強引に抱かれたから


今は触れられるのが少し怖くなってしまってるのかもしれない


でもあの時、抱き締めてくれた時はすごく温かかったな








直人さん

存在を思い出して、また胸が痛む









剛「……」






せっかく前に進めると思ったのに

直人さんから振られた

急すぎて、自分でも全く実感が湧かない




"待ってるから" そう言ってくれたのに

やっぱり嘘だったの…？









剛「ねえ、お腹空いてない？」





脳内を切り裂くように、剛典が私に問う






確かに…お腹空いたかも


頷くと、「っしゃ！」って腕まくりをしてソファから起き上がった









キッチンへ向かう剛典を見て不安になる



「何するの？」



剛「え？料理！」




屈託のない笑顔でそう答えるから、さらに不安が増す

だって剛典は、料理の一つもできない男だったから









剛「まあまあ、期待しててよ！」



そんな風に言われても、心配なものは心配

61→←59

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す