淡く溺れて。2

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「ちょっと待ってよ！！」






おみに連れられて数時間、着いたのは湘南海岸




臣「もうヒールじゃないんだからもっと早く歩けるだろ」





ぐうの音も出ない


剛典の家を夜中に出て、乾いた前日の服を着てたまんまだったから一旦車を取りに行ったおみの家で駄々をこねてたら、私には大きめのパーカーとスニーカーを貸してくれたから


だから遅いのは私の元々の身体能力の問題


でもあれはわざと早く歩いてるにみえるけど？








「てか免許持ってんだね…」




東京から湘南海岸まで車で約2時間


もうそろそろ、朝になるよ？！







臣「お前がメイク落としたいって言ったからだろ！」



あれ、声に出てた？




そしてなにも言い返せません…






だから今すっぴん状態
だって、落とさないと肌が…なんて、一応私も女だもん


マスクはもらって、ありがたく着けさせてもらった









少し歩くと、風が冷たい

やっぱり秋だからかな







そう思ってると突然足を止めるおみ







臣「ジャストタイミング、見てみ」








「……わぁっ…！！」







海岸線の向こうから照らされる太陽の光

いわゆる、これが日の出







オレンジ色に照らされて海が揺れる

冷たい風なんか、忘れちゃうくらい









「綺麗…！！」








ずっと見てたくなる

アドレナリンが漲(みなぎ)るというか、邪悪なものが全身から抜ける感覚









吸い込む、朝の風









臣「たまにはこういうとこもいいだろ？」




風に吹かれるおみの髪が、なんか様になってるのを見て流石だなって思った






「写真集の一面みたい」

臣「お、褒められてる？」






はは、と笑うおみから何処と無く優しさを感じる









「…ありがと」



泣きわめいてばっかりの私を、ここに連れ出してきてくれて



臣「なにが」









そう言ってるけど、多分それは照れ隠しで


今まで、あんな関係をしていたとは思えないほどお人好しな面もあるんだと

新しい発見









こういうところに恋心は生まれなくても

なんだか、心地いい









臣「…惜しいなー」

「…？なにが？」









臣「なんでもない、てか知らなくていい」

「なにそれ(笑)」









もっと早く、手にしときゃよかった



なんておみの独り言、私の耳には届かずに



湘南の風が攫(さら)ってった

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