吐息 ─熱─ ページ20
鏡夜「俺は…Aがホスト部に入るまでは、ホスト部なんてものは環のお遊びで、俺はただそれに付き合っているだけだと思っていたんだ」
ぽつりと零された本音に、Aは緊張を解き、静かに耳を傾ける。
鏡夜「まぁ確かに、環の馬鹿さ加減とか、他のメンバーの我儘に呆れることも多々あった。だけどそれなりには楽しかった」
ゆっくりと眼鏡を押し上げ、鏡夜はモニュメントを見上げる。それに釣られてAが顔を上げる。
先ほどと変わらずただきらきらと、ホスト部での思い出が蘇る、いや、むしろホスト部を表しているくらいの輝きを誇っている。
息を吐けばふわりと白いもやが風に乗って流れていく。
鏡夜「だけどな、A。お前に出会ってからは少し違った。あいつらと馬鹿するときとは違ったんだ」
Aが鏡夜へと顔を戻す。柔らかく自分を見つめるその視線は、ホスト部に居る時とは違う。
女子生徒たちに向ける視線とは、違う。
鏡夜「Aがいるだけで心が踊る。Aが笑うだけで顔が緩む。Aが悲しそうにしていると手を差し伸べたくなる。……こんなのは、今までにお前だけだよ」
こつり、鏡夜の足が床を叩く。
じっと話を聞いていたAの元へ。
手を伸ばせば触れられる距離に。
鏡夜「……A、お前が好きだ。鳳家三男の鳳鏡夜としてではなく、ホスト部副部長の鳳鏡夜としてではなく、ただ1人の男である鳳鏡夜として、Aが好きだよ」
ふわり
そんな
甘い顔で
A「………っ！」
力強く地面を蹴る。
愛おしい彼の胸へ飛び込むために。
勢いよく飛び込んだにも関わらず、鏡夜は軽いものを包むかのように抱きしめた。
A「本当に、僕でいいんですか。ドジで、何も無いところで転んじゃって、いろんなトラブルも起こしちゃって───」
す、と、鏡夜の指がAの唇に触れる。
鏡夜「俺はそんなお前が好きなんだ。何回言わせるんだ…恥ずかしい」
照れたように目尻を下げる。
心臓がぎゅっと掴まれているような、しかし心地いい気持ちが胸中を占める。
A「ぅ…─ぃ」
鏡夜「…A？」
A「嬉しいです…っぅ…ふ」
愛おしさに比例するように涙が溢れ出る。
少し慌てたような身じろぎを服越しに感じ、しかし離すことなく抱きしめてくれていた。
何度も頭を行き来する大きくて優しい手。
何度も涙を拭いながら盗み見たイルミネーションは、最初に見た時より一等輝いているような気がした。
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←夜 ─大事な話─
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 626人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し51934号(プロフ) - 最高すぎます、、、できたらまた、、鏡夜先輩のを(( (2020年9月23日 3時) (
レス) id: ff1ca694a3 (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても面白い素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m思わず1話から最後まで読んでしまいました！これからも素敵なお話をよろしくお願いします！ (2019年11月1日 15時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
樹 - おー、更新されてる!相変わらず面白いですね♪お帰りなさい！待ってました！更新頑張ってください！ (2019年1月5日 14時) (レス) id: 7fba46ff84 (このIDを非表示/違反報告)
ポテトサラダ(プロフ) - にゃおさん» にゃおさんコメントありがとうございます！前文にも記述させて頂きましたが、この作品は絶対に完結させてみせますので、応援よろしくお願いします！！（；；） (2018年12月26日 2時) (レス) id: 9cdb9084ee (このIDを非表示/違反報告)
にゃお(プロフ) - お話拝見させて頂きました!!とても面白くて続きが楽しみです！ (2018年10月23日 21時) (レス) id: 5d7f8ac497 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポテトサラダ | 作成日時：2015年5月17日 21時
