経歴と定食 ページ11
安田「避難先から通勤してるんだって？」
A「あ…はい。」
どうやら安田部長には知らされてるらしい。
安田「人事部だからね。一応、管理って意味で知らされた。」
A「そうなんですね、」
安田「短い間にはなると思うけど、会社側としては住所の変更をしなくちゃいけなくて。」
A「なるほど…」
暖かい味噌汁が食道を通っていく。
安田「それで俺、何となく見ちゃってさ。Aさんの経歴。」
A「そう…ですか。」
安田「Aさん、雄英出身なんだってね。」
A「…はい。」
安田「意外だったよ。しかもヒーロー科。仮免も持ってるとか。」
A「…」
私はこの事実をあまり人に知られたくない。
"何でヒーローにならなかったの？"
"それともなれなかったの？"
"途中で諦めたの？"
"勿体ないね"
そういった周囲の意見に嫌気がさしたから。
誰もがそう思うのはわかる。
あの雄英のヒーロー科に受かって3年間通い、卒業したにも関わらず小さな会社でOLをしているなんて。
わかる、けど。
ああ、安田部長もそんなようなことを言うんだろうな。
そう覚悟して、定食を噛み締める。
安田「すっごいね、Aさん。強い人なんだね。」
A「え？」
予想外の言葉に顔を上げる。
安田「え？って…すごいと思わない？だって雄英だよ？みんなに自慢して言いふらしてもおかしくないよ。」
A「いや、そんな…」
安田「入学するだけでもすごいんだよ。俺なんか入りたくても入れない。」
安田部長は眩しいくらいに笑った。
安田「尊敬するよ。」
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作者名：チーズおかき | 作成日時：2020年12月17日 5時
