ポニーテール ページ20
台本に目を通しながらメイク室へ。
A「よろしくお願いします」
人に顔を触られる行為がどうも苦手な私は、いつも眉間にシワを寄せてしまう。
隣でメイクをされる虫さんを見ると、
私と全く同じような顔をしていて笑える。
虫眼鏡「…何?」
鏡越しに目を合わせる虫さん。
A「何でもない」
スチーマーの蒸気が私を包み、化粧水を浸したコットンが肌を撫でる。
柔らかくなった肌に薄く伸ばされていくファンデーション。
虫眼鏡「…Aさあ」
A「何?」
目を閉じ、顔をなるべく動かさないようにしたまま会話をする。
虫眼鏡「どうする?今度のイベントの衣装」
A「買いに行く」
虫眼鏡「明日行かん?」
A「いいよ」
頬や目元、至る所にブラシが触れていく感覚。
自分の化粧がいかに雑か思い知らされるかのように、
丁寧で、繊細な動き。
メイクさん「髪型どうします?」
A「あー…」
何も決めていなかった私は、答えに困る。
読んでいた台本の出演者欄に、司会のアナウンサーを除いた女性が私しかいないことを確認する。
A「この方って髪型どうされました?」
メイクさん「ハーフアップです」
A「じゃあポニーで」
これから先、どれだけ有名になったとしても、
ありのままの私を忘れたくない。
東海オンエアとして初めて活動した時のこの髪型は、
私にとって特別なものだ。
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77.0 - ほんとに素敵な表現力されてますね (2021年12月16日 1時) (レス) id: 5a0b14c285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズおかき | 作成日時:2021年2月22日 15時