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《2》 ページ8

あれは、中学1年の時。

小春日和で、雲一つない青空が広がっているのに、室内競技のバレーは体育館が会場。

私は、友達に連れられバレーの大会を観に来ていた。

「みてみてA!あの人、及川徹先輩!格好良い〜!」

友達は及川先輩のファン。

そう、私は北川第一中学1年だったのだ。

当然覚えられてないだろうけどね。

だってその時は、私にも羞恥心と言うものがあったのだ。

「へー……あ、私喉渇いたからジュース買ってくるね」

もうすぐうちの学校が勝ちそうだし、友達が私を咎める事は無かった。

複数の黄色い歓声が反響するコートに背を向けて歩くと、試合終了のホイッスルが鳴った。


「はー……」

ゴトン

缶コーラを買って、騒がしいフロアをさっさと通り抜けようとする。

と。

__ドンッ

「ぎゃっ……」

何かとぶつかって、可愛げない声を上げた私は尻餅をつく。

「うおっ!わ、悪い!!」

頭上に降り注ぐ声。

すぐに謝られたものだから、相手にも悪気が無いのだと解り、「いえ」と小さく答える。

青と白のユニフォーム。うちの学校だ。

「大丈夫か、立てるか??」

スッと滑らかに差し出された、大きく逞しい手。

小学校の男子とは比べ物にならないくらい、スマートに。

しかも、しゃがんで私に目線を合わせて。

彼にとってはそれが普通なのかもしれない。

彼の人生で、私なんて脇役にも入らない、エキストラだと思う。

でも、それでも。

私はたったそれだけで、世界が輝きだしたんだ。




「……と言う訳ですが、何か文句でも?」

及川先輩は腹を抱えて震えていた。

おいこら。

「き、君の中で岩ちゃん、美化されてない?」

イケメンは何言っても許されるわけじゃねえんだよボケ。

「んなわけないです。さりげなく仲間をフォローしてるし、正直及川先輩より主将らしいし」

「酷いね!?……だってさ、岩ちゃん」

「へ、」

及川先輩の向いた方を見ると、居た。

岩泉、先輩。

こういうのに慣れて居ないのだろう、顔を真っ赤に染めて。

視線は私と及川先輩を行き来している。

「ほら、言いたいことあんでしょ」

及川先輩は去っていく。

「あ〜、その、何だ……取り敢えず、いつもありがとな」

視線を迷わせながら言う先輩は可愛らしすぎる。

「それで、良ければなんだけどよ……」

ああ、なんだろう。どうしよう。

「下で、練習観ればどうだ?」

ストレートに伝え続けた結果がこれなら、

私、間違ってなかったな。



「はいっ……!」

無気力彼女と俺と【菅原】 ※菅原side→←ストレートに、アタック【岩泉】



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ちくわ太郎(プロフ) - 一つ一つの話が最高過ぎる (3月23日 2時) (レス) @page22 id: a648931a76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:烏丸 | 作成日時:2016年11月13日 14時

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