【ハイキュー】毎日を、君と【短編集】 (ページ5)

今日:24 hit、昨日:22 hit、合計:7,173 hit

感謝が言えるのは【二口】　二口side ページ5

「ねー二口」

「お？」

「ワイピングのタオル古くなってきてるから、ちょっと買いに行ってくる。

　舞にも言っといて。ドリンクはもう準備してあるから」

「ん、わかった」

淡々と告げて、監督と一言二言話してからアイツは出て行った。

Aは、率直に言えば仕事が早い。

滑津が遅いワケじゃねえけど、Aはもう、何て言うか……一瞬で終わらせてる感がある。

「おい滑津。A、ワイピング用のタオルがボロくなったって買いに行ったわ」

「え！うそ、A言ってくれればいいのに～」

滑津とAは仲がいい。

コイツらには、俺たちはいつも感謝してる。

けど、中々言えねえ。

「はい、作くん」

「ありがとうございますっ」

１年は素直に言うけどな。

”慣れ”と”照れ”が邪魔して、何も言えなくなる。

「ただいま……」

「おかえりなさいッスAさん！」

黄金が一番に飛んでいく。

次に行くのは作並と、小原。

すると、小原が気付いた。

「A、足ひねった？不自然だけど」

「え、いや大丈夫……」

その会話に、考えるより先に割り込む。

「足、見せろ」

「え、ちょ……っ」

靴下を許可を得ずに下げてみると、足首が赤黒く腫れていた。

「どこでやった」

「……タオル買って戻って来る途中。坂道でひねった」

いやドジか。

「滑津、コールドスプレー」

「はいっ」

もう準備してあったように直ぐ渡されるスプレー。

その速さに、言葉は自然と滑り出た。

「サンキュ」

「ん」

滑津は軽く返事して、ドリンクを他の部員に渡し始めた。

「ひ、ぃっ……！」

構わずぶっかけたそれに、Aは短い悲鳴を上げた。

そりゃ、冷たいからな。

パイプ椅子をパンタロンに出させて、Aを座らせて手当てする。

「おっまえ……馬鹿か！！」

それを皮切りに説教が始まる。

無茶ばっかすんな。

そういう時は電話しろ。

何で全部自分だけで隠そうとする。

もっと頼れ。

「だ、だって」

Aは俺に気圧されながらも言い訳を述べる。

「春高予選まで時間ないし、二口に迷惑とか心配掛けたくなかったし、」

「馬鹿」

遮った俺は、Aを思いきり抱き締める。

「お前が一人でそう言うの抱えてる方がよっぽど心配かけんだよ！大事なマネージャーなんだから、

　いつもお前らに負担かけてんだからそれくらいは言え！！」

俺は未だ気づかない。

彼女が無理をする時ほど、感謝の言葉は自然に出る事を。