必殺技【山本】 ページ24
「ﾏｯマネージャーッ！！」
「……え？」
それが、私と山本猛虎さんとの最初の会話だった。
高校1年の冬。
春高が終わって新体制へ移行するというバレー部の、
新部長が猛虎さん。
私はバレー部のリエーフくんと同じクラスで、
リエーフくんに用のあった猛虎さんは、うちの教室で
私を見るなり顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
……なのに。
猛虎さんは女の子と話すのが得意でなく、
学年が上がって、もうすぐインハイ予選だというのに、
猛虎さんは私とまともに目も合わせてくれない。
正直不満である。
私は、別に猛虎さんのことは嫌いではない。
むしろ好き、だと思う。
見た目は特別好きでも嫌いでもないけど、
バレーに対するまっすぐな姿勢は、かっこいい。
オーバーワークしがちなのは心配だけど、
研磨さんや招平さんが咎めてくれているし、
私が咎めると不本意だが確実に止まる。
熱くなりすぎるわりに部員のことをよく見ているし、
気遣いができる人だと思う。
……でも。私のことは全く見てくれやしない。
「ね、どー思いますか？研磨さん」
「え……おれに聞かないでよ」
研磨さんはいつもこんな調子で取り合ってくれない。
……別に、業務に支障があるわけじゃない。
でも、いいじゃないか。
もうすぐ、先輩たちにとって最後の夏なんだ。
「仲良くなりたい、だけなんですけど」
「それ、トラに言えば」
「言うまでもなく逃げられちゃいますもん！」
むぅ、と不満を隠さない私をよそに、
研磨さんは「あ」と小さくこぼす。
「A」
「はい？」
そうして次には、「必殺のコマンド、覚えたい？」と
こちらも見ずに言うのだった。
「何が必殺のコマンドなんですか……」
次の日曜日。
「10時にここね」と研磨さんに指定された場所には、
何故か猛虎さんがいた。
所謂デートである。
「なっ……！？」
案の定猛虎さんは固まってしまって、
このあとのプランなんてあろうはずもない私も、
どうすればいいかわからず困ってしまった。
……ええい、いちかばちか。
「ファッ」
私は猛虎さんの手を取って、街を走り出した。
ちらっと猛虎さんを見ると、バチリと目が合う。
……目が合ったら、そらせない人なんだ。
いいこと知っちゃったな、なんて思いながら、
私は今日1日をどう使うか考える。
必殺のコマンドなんて、研磨さんは持ってない。
ならば、自分で作り出すまで！
「今日は楽しみましょーね、猛虎さん♡」
続く
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ちくわ太郎(プロフ) - 一つ一つの話が最高過ぎる (3月23日 2時) (
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作者名：烏丸 | 作成日時：2016年11月13日 14時
