検索窓
今日:16 hit、昨日:35 hit、合計:7,200 hit

責任【東峰】 ページ22

東峰旭。

その幼馴染に、私はいつも泣かされている。



「A〜、いたいた」

人の少ない廊下で旭に声をかけられる。

高校3年2月。互いに進路を決め、穏やかな日々だった。

「旭。どうしたの?」

「あー、今日、帰り飯食って帰らない?」

「全然暇だし、いいよ」

そう言いながらスマホを出して、母に連絡をする。

特に断る理由はないからだ。

「あ、そう、!よかった……何食べたいか考えといて」

「ん」

幼馴染。

2人で話していても特に疑問には思わない、思われない。

私はこの距離感に不満を抱きつつ、同時に安堵していた。

「あー……じゃ、じゃあまたお昼に」

そう手を振って教室に戻る大きな猫背を見つめる。

旭が好きだ。昔から、ずっと。

ネガティブだし見た目いかついくせに意気地なしだし。

そんな小心者のくせして、一丁前に私を守ろうとするし。

幼い頃、猫を助けようとして自分が怪我をした旭。

他校のヤンキーに絡まれる私を守ろうと立ちはだかる旭。

そんな彼を心配するあまり、私はいつも泣いている。

心配だ。目を離せない。……そんな時間を重ねるうちに、

それは愛に変わっていた。

そんなこと、旭は知らないんだろうけど。



お昼休み。

いつも通り、旭と澤村と菅原がいると思っていたけど。

「主将副主将の引き継ぎだって」

「もう引退から1ヶ月経ってるのにまだあるんだ?」

「な。大変だよなぁ、あいつらはまだ受験あるのに」

2人きりは久しぶりだから、少し緊張する。

「そういえば、何で朝わざわざ言いに来たの?

 今でも良かった気がするけど」

そう問うと、旭はぎくりと肩を揺らした。

何だ。何か後ろめたいことでもあるのだろうか。

「えっと……いや、特に理由は、いや、その……」

煮え切らない態度。きまり悪そうな情けない顔。

……でもその耳は、頬は、少し赤い。

「……Aと、少しでも、話したくて……」

何それ。

期待したくなるようなこと、言わないでよ。

「ねぇ……それ、何で。何で、私と、話したいの?」

そう問いかける私の声も、震えている。

旭を見遣ると、ほんとうに真っ赤。

「……それは、その……す、好きだからだろ。Aのこと」

でも、最後は真っ直ぐ目を見て言ってくれた。

「えっあっごめ……泣……!?」

おろおろする旭は滲んでいて、自分が泣いているとわかる。

相変わらずな旭。仕方ないな。

「……ばーか、私も好きだよ」

泣かせた責任、取ってよね。

熱に浮かされ【星海】→←どんなあなたも【花巻】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 恋愛 , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちくわ太郎(プロフ) - 一つ一つの話が最高過ぎる (3月23日 2時) (レス) @page22 id: a648931a76 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:烏丸 | 作成日時:2016年11月13日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。