【ハイキュー】毎日を、君と【短編集】 (ページ18)

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諦められない【日向】ページ18

「ブラ、ジル……？」

高校3年。3月も半ば。

幼馴染の翔陽の口から出た言葉に、気を失いかけた。

「ウワァァA！！？大丈夫！？」

大丈夫なワケないでしょ。

英語もまともに喋れなかった翔陽がブラジル？

ブラジルって公用語英語だっけ？ブラジル語ってある？？

混乱する私のために、翔陽は少し先にある自販機に行く。

その背中を見ながら、胸が苦しくなるのを感じる。

……やっぱり、翔陽はすごいなぁ。

昔からそういった努力は惜しまない人だ。

バレーもあんなに下手っぴだったのに、今や全国3位。

遠い人になっちゃったな、なんて。

大学さえ地元に残る私はきっと、翔陽に到底釣り合わない。

……早く、諦められたらいいのに。

「A？ほんとに大丈夫？」

気づけば翔陽は私の目の前に戻ってきていて。

その手には、私が昔から好きなジュース。

私が落ち込んだり、喧嘩した後の仲直りには、

翔陽は必ずそれを私にくれる。

……むりだ。

翔陽を好きじゃなくなるなんて、むりだ。

「だめ、行かないで」

「え」

困らせるのはわかってる。

でも、一度言葉にしてしまったら。

「高校も離れたのに、次は国まで違うの……？

　もう会えなくなっちゃうなんてやだ、だって私」

翔陽のこと、ずっと好き。

ぐすぐすと涙をこぼしながら、告白する。

もう会えなくなってしまうのなら、伝えておかないと。

そうしないと、絶対に後悔する。

何も言わない翔陽を見ると、

「ッ！！！！」

顔を真っ赤にしていた。

「しょうよ、？」

「アッゴメンなさい！！！アッいや違くて！！」

私よりテンパる翔陽を見てると、何だか冷静になる。

「その……ごめん！おれ、全然気づかなくって……

　Aは幼馴染だし、そういう風に考えたことなくて！」

……わかってた。私が翔陽の恋愛対象じゃないことくらい。

これでいい。これで、前に……「だから！」

翔陽が私の手を取る。缶を持っていた左手がひんやりした。

「だからっAに言われるまで気づけなかったけど！

　おれも！！Aのことが好きです！！！！大好き！！」

「……え」

今度は私が唖然とした。

「……ブラジルに行くのはやめられない。強くなりたいから。

　だけど、お前を他のやつに取られたくもない。

　……ごめん、待ってて欲しい」

真っ直ぐ私を見る翔陽。

綺麗なオレンジ。

あぁ……そのオレンジが、何よりも好きだ。

「……うん。待つよ」

私、待てるよ。

大好きな翔陽のことなら。