お互い様【宮(侑)】 ページ17
「侑ッ!!」
体育館に、私の叫び声が響く。
「まぁたオーバーワークしよって〜〜!!」
侑治の双子と私はいわゆる幼なじみ。
私は気づけば二人のお目付役になっていて。
特にすぐ無茶をする侑への説教は日常茶飯事だ。
それはもう、稲荷崎男子バレー部公認で。
尾白先輩に「いつでも来てくれ」と言われる始末。
できれば来たくはない。でも、それ以上に……
「クラァッ侑!!いい加減にせぇ!!!」
下校時間間際。
大会は先日終わったばかりで、体育館にいるのは侑だけ。
侑だけが、焦っている。
「休息もバレーのうちやろうが!ほら帰るで!」
「……喧しいわ。お前には関係あらへんやろ。
さっさと帰れや」
侑はインターハイ決勝で負けてからというもの、
不機嫌が続いていた。曰く「優勝以外はビリ」らしい。
勝手に焦って、オーバーワークして怒られて逆ギレ。
あー…………ほんまに、腹立つ!!!!
「何逆ギレしとんねん、こっちかて1回家帰って
ゆっくりしとったんに何遍も学校なんか来たないわ」
「じゃあ来んでええやろ。誰も頼んどらんねん」
ギロリと睨みつけられる。睨みたいのはこっちや。
こっちの気も知らんと……!
「あんたのこと、心配やから来とんねんバカツム……!」
昔、侑は私の前で結構な大怪我をした。
何でだったかは忘れた。多分治との木登り対決か何か。
あの頃は今以上に頭に血が上りやすかったからだけど、
それでも、こわかった。
いつも喧しくて落ち着きのない侑が動かなくなって、
……あれからだ。どれだけ疎まれても、私は、
侑のことを守りたいと思った。
「心配されたくなかったら心配かけんようにせえや。
あんたがいつまでも危なっかしいから心配なんやん
こんのバカツムが……!!」
「なッ……お、おいA……泣くなや……」
「泣いとらん!」
「大嘘やん!!!」
ぐずぐずと鼻を啜る私にどうすればいいかわからない侑は、
おろおろと周りを回って、それから、
私をそっと抱きしめた。
「……泣くな。お前が泣いとったらどうすればええかわからん」
頭を抱え込まれて、侑の匂いに包まれる。
「最初から泣かせんな……っ」
精一杯の強がりに、侑は
「ほんま可愛ないな……おれンこと大好きなくせして」
と言って、私にキスをした。
「……悪かった。ほら……帰るで」
そう言って手を繋いで体育館を出る。
最後には私に弱い侑。
そして私も、
「……おん」
結局、侑には弱いのだ。
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ちくわ太郎(プロフ) - 一つ一つの話が最高過ぎる (3月23日 2時) (レス) @page22 id: a648931a76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:烏丸 | 作成日時:2016年11月13日 14時