【ハイキュー】毎日を、君と【短編集】 (ページ15)

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攻略対象【孤爪】ページ15

モヤモヤする。

最近、同じクラスの孤爪研磨がモテている。

理由は単純。部活の全国大会で大活躍したから。

でも、でも……！

「私の方が、ずっと前から好きだったのに……！！」

私と研磨(と黒尾くん)は中学の時に出会った。

私の兄がバレーをやっていて、二人はその後輩。

私も女バレだったから、すぐに黒尾くんと意気投合した。

研磨は最初こそ全然話してくれなかったけど、

今じゃもう軽口だって言い合える仲だ。

「あ、A……」

「けんま！くろーくんも！」

二人と目が合って、嬉しくなって駆け寄る。

周りの視線が少し痛いけど、そんなの関係ない。

付き合いの長さも信頼関係も、私の方がずっと上だ。

「おーA。なんか久しぶりだなー」

「たしかにっ！……男バレ春高出てから人気だねっ」

……その言葉に、自分で言っておいて刺し殺されそう。

研磨はもちろんかっこいい。

でもそれは、バレーをしてるときに限った話じゃない。

「鬱陶しいだけ……あ、A危ない」

「えっ」

ふざけた男子たちがこっちに近づいてくると、

私を引き寄せて避けさせてくれたり、

「あ、ありがと！」

「うん。……廊下寒いよね、教室入ろ。じゃあねクロ」

「おー。Aもまたな」

気遣ってくれたり。

こういうことがサラッとできるいい男なんだから！

……でも。

そんなかっこいいとこは、私だけに教えて欲しいとも思う。

私だけが、研磨を好きでいたい。

それであわよくば、研磨も私だけを好きでいて欲しい。

もちろん、黒尾くんとかバレー部は別だけど！

「……けんまぁ」

「何……エッ」

「あんまり優しくしないでぇ……」

気づけば私の視界はぐずぐずに歪んでいた。

まだ頬には伝っていない。けど、今にも零れんばかりだ。

「……おれ、誰にでも優しいわけじゃないよ」

はぁ、とため息をついて、研磨は目を逸らす。

「……Aにだけだよ。優しくするのも……

　かっこよく見られたいって思うのも」

引き寄せられたときに掴まれた腕。

研磨の手はいつの間にか、私の掌を掴んでいた。

HRが近いから、廊下に人は少なくなった。

だからやけに、研磨の声が響いた。

「おれが攻略(オト)したいのは、Aだけ……わかってよ」

男子にしては長い髪の毛の合間から見えた頬は赤くて。

それが指す意味がわからないほど、鈍感じゃない。

もう何も言ってくれない研磨に応えるように、

私はその手を、ぎゅっと握り返した。