たとえ罪に呑まれても (ページ40)

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「ごめん、俺、やっぱり今日予定あったわ。」
「そうなの…？ごめんね！急に誘って。」
「いや俺こそごめん。」

気まずくならないように優しく笑ってみせる。
期待をさせたくないんだ。
自惚れだったとしても。

マイは一瞬、悲しそうな顔をしたけれど
直ぐにいつもの笑顔に戻った。

「はぁ…」

マイが居なくなったのを確認して短く息を吐く。

「せっかく誘われたのに、なんで断ったの？」
「お前は盗み聞きすんじゃねぇよ。」

背中から聞こえてきた声。

「照はなに？好きな人でも居んの？」
「良ねぇけど。」
「マイ、いいと思うんだけどなぁ」

奥の方で仕事を再開したマイを見ながら阿部はそんな事を言い始める。

「だとしたら尚更」
「なんで？」

「期待をさせたら可哀想だろ。」

「ふぅん。」

納得いってない顔をしながらまぁ、俺が口出す事じゃないけどね。と言って俺の肩をポンっと叩いて阿部はデスクに向かった。

俺もデスクに座りパソコンを立ち上げる。
営業だからと言ってデスクワークが無い訳ではない。

カタカタとキーボードを叩く音。
そして、スーツのポケットの中で聞こえるバイブ音。

片手でマウスを動かしながらもう片方の手で携帯を取り出して画面をタップする。
メッセージの差出人は。A。

スライドして内容を確認する。

[やっぱり、照くんに会いたいです。]

二日ぶりの連絡。
Aのメッセージに手が止まった。

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