たとえ罪に呑まれても (ページ33)

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「でも、私は絶対両思いにはなれない。」

俺の少し前を歩くさくらの足が止まった。
つられて立ち止まる。

くるりと振り返ってやっぱり泣きそうな顔だ。

「あの人には一番がいるから。」

…だから、だからか。
初対面の俺の話を聞いて涙を流したのは。

「…そうなんだ。って俺もか。」
「あはは、似てるね！私たち。」

「あ、俺さ、その。さくらと一緒に写ってる人知ってる」

「え？なんで？」

さっきまで泣きそうなくらい苦しそうな顔が目を見開いてえ？って顔をしてるからちょっと笑える。

「仕事で、取引先の人。目黒って名前だろ？」
「…うん。そう。ほんと？うわ…めちゃくちゃビックリしてる」
「俺さ、その人と会った時に、この人どっかで見た事あんなって。
多分さくらが声掛けてきた日にチラッと待ち受け見えたんだよね。それで。」

「世間って狭いもんだねぇ」

「だな」

俺たちはまた歩き始めた。

駅前で俺達は別れて俺はまだ酒の残る身体を動かして家路につく。

ふと、考える。

俺はAの事を考えた時にさくらみたいな顔をしてんのかな？って。
あんなに苦しそうな顔してんのか俺は。

一番になれない。

そもそも一番ってなんだよ。
俺が今、センチメンタルになってても
Aは一番の男と過ごして身体を重ねてんのか？
そんなことを考えたら頭が狂いそうだ。

そうか、これが、一番と二番の違いか。
なんて妙に納得してしまった。

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