たとえ罪に呑まれても (ページ27)

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「…照くん…もっと、」

俺だけを見てよ。
俺だけを求めてよ。
俺だけに、しておけよ。

そんな願いは叶う事なく、Aは俺に抱かれて家に帰っていく。

「またね」
「うん」

「A。」

「ん？」
「いや、なんでもない」

言いかけた。そんな男と別れろって。
でも、また振られて
やっと手に入れた二番目のポジションすらも無くなってしまう。そう思ったらそれ以上言葉が出なかった。

玄関のドアが閉まる。
Aは振り返ることも無く歩いていった。

思わず出そうになったため息。
それと同時に信じられない位の虚無感に襲われる。
コレはAが帰った後は毎回で。
まぁ、理由なんて俺が一番分かってるけど。

今日は朝から忙しい。
ホワイトボードに出先の会社名を書く。

「あれ？岩本くんここの会社？」
「おう」

俺と同じように自分の名前の所に会社名を書いている。

「そっか、ここ契約取るの難しいで有名だけど頑張ってね」
「さんきゅ」

俺はカバンを持って会社を出た。

そこの会社は大手企業って感じの大きいビルで。
緊張するよりも燃える気持ちが勝つ。
俺は心の中で気合を入れて会社に入る。

受付の人に自分の会社名を伝えると直ぐに会議室のような所に通された。

「あ、遅くなってごめんなさい。」

そう言って入ってきたのは俺よりも若く見える男の人で。
どこか見覚えがあった。

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