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私は妹よりも先に、親戚の家に預けられた。
親戚と言われていたけど、その家にいた人たちは偽物で塗り固められていた。
お嫁さんだけが真っ直ぐな瞳をしていて、他の人たちの瞳は怖かった。何を見ているのか、目に見えているものをねじ曲げるような怖さを持っていた。
「Aはこないの?」
「Aなら明日来るよ。芹菜にも話したことを、Aにも話しておかないといけないから。待てる?」
「うん!お母さんのことも、待ってるね!」
そう言って、もう母の姿は見えなくなった。
母も、父も。
預けられた家の玄関で見た姿が最後だった。
笑っていた。
悲しそうに。
行かないでと、止めることはできなかった。
幼かった私に理解することはできなかった。
預かってくれたお嫁さんの旦那さんが言った。
「君のお母さんとお父さんは柚姫との戦いで死んだんだ。え?もちろん、悲しいさ。僕の妹だったからね」
「ちょっと聞きたいんだけどね、君の妹の瞳は何色だったかな」
私は正直に、赤色と答えた。
その旦那さんの笑った顔は怖かった。
死んだ母と父よりも、妹が気になった。
特別になった妹は生きているのだろうか。
もし生きていたら、もう家族は私しかいない。
私が守らなくてはいけない。私が助けてあげないと。
気がついたら家を飛び出していて、私の本当の家へと走っていた。
妹に会いたい。
妹を助けたい。
妹を守りたい。
それだけの思いで駆けた。
妹のために走った。
それでも、着いた先に妹はいなかった。
代わりにいた綺麗な青色の瞳のお兄さんが言った。
「君の妹はこっちで預かってるよ」
「俺?俺は、まぁー、昔ここに世話になっただけ」
「わかんねぇけど、そのうち会えるんじゃね?だから、さっさと家に戻れ」
私の家はここなのに。
お兄さんの言う家は、きっとあの親戚の家。
お兄さんの後ろにあったはずの私の家は、見たことないほどの赤色をしていた。
綺麗にしていたはずの庭もぐしゃぐしゃで、絵の具みたいな赤色が散らばっていた。
その日の夜に知った。
私と妹は、もう一緒には暮らせないらしい。
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます!!もったいないお言葉です。これからも頑張ります! (3月8日 11時) (レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます!!大好きです。これからも陰ながら応援しています! (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyon | 作成日時:2023年12月29日 21時