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急いで外へ出る。
焦っていた。慌てていた。
ほんの少しの期待を抱いて。
もしかしたら、まだいるかもしれない。
見られなくなくて、逃げたのかもしれない。
そんなことはないと分かっているはずなのに。
思考に気が付かないふりをして、ただ外に出た。
結果は一緒だ。
何もない。
ただいつもと同じ景色が広がっていた。
芹菜さんと一緒に歩いた道が見える。
芹菜さんと一緒に見た空が見える。
ただ、それだけ。
閉まった扉に身を任せて、ずるずると崩れ落ちる。
本当に終わったんだ。
芹菜さんと僕が一緒に歩めたのは、ここまでだったんだ。
どんどん視界が霞んでいく。
記憶が流れてくる。
芹菜さんがいない幸せなんて、あの日から考えていない。
芹菜さんがいないと、幸せになんてなれない。
芹菜さんがいないと、涙の止め方さえ分からなくなってしまった。
出会ったあの日から、ずっと楽しかった。
そりゃあ苦しいこともあったけど。
芹菜さんがいたからそれでよかった。
灰色の世界に色をつけたのは芹菜さんだった。
間違いだらけの世界に正解を見つけてくれたのは芹菜さんだった。
まだ、ありがとうを伝えきれていない。
もう一度その名を呼びたいのに、声が喉を通らない。
震えて、詰まって、出るのは嗚咽だけ。
呼びたい。呼べない。
最後にもう一度、せめてそれだけ叶えさせてくれよ。
涙で顔も、思考もぐちゃぐちゃだ。
手に握られていたはずの手紙と箱が寂しそうに隣に座っている。
早く中身を見たいけど、中身を見たら全てを受け入れなくてはいけない気がする。
やっとの思いで一度拭った目。
ほんの少しの透明に、視界の端でほんのりと青が光る。
今まで、あそこに青色はなかった。
涙を何度か拭い、その青に近付いてみる。
ぼやけていた視界にくっきりはっきりと青が写る。
花が、一輪だけそこに置いてある。
一輪だけなのに、寂しそうではなくて、むしろ生き生きとしていた。
花を手に取ってみる。
その花弁に触れた途端、また涙が溢れ出る。
その花には芹菜さんの呪力が宿っていた。
この花の生命源は芹菜さんの呪力だった。
その花を胸に抱く。
「…っ芹菜、さんっ」
やっと、名前を呼べた。
震える声で、もう一度名前を呼ぶ。
返事がなくても、呼び続ける。
その花に宿る芹菜さんを逃さないように、聞こえるように、ただひたすらに、花に縋る。
.
続く
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます！！もったいないお言葉です。これからも頑張ります！ (3月8日 11時) (
レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます！！大好きです。これからも陰ながら応援しています！ (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kyon | 作成日時：2023年12月29日 21時
