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「なんだっていいよ、ナズナが笑ってくれるなら。私のためにも、幸せになってね」
芹菜さんはいつも通り笑う。
それが無理をしている笑みなくらい、もうずっと一緒にいたから分かる。
本当は辛いんだ。
柚姫の呪いが蝕んでいっているんだ。
それでも、芹菜さんは最後まで笑おうとしている。
それは分かって、それだけしか分からなくて。
芹菜さんの感情そのものは、分かってあげられない。
「テレビの横の棚にさ、ナズナに見せたいものがあるからさ、取ってきてくれない？」
「え、でも……」
「お願い。私は、もう動けないから、」
苦しそうに顔を歪めて、それでも必死に笑おうとしている。
芹菜さんにお願いされたら、断れないじゃないか。
しょうがないですね、って。
いつも渋々って顔をしながら、本当はお願いを聞くのは嬉しかった。
わがままなふりをする芹菜さんに、振り回されるふりをしてきた。
本当はずっと家族といたくて、妹に会いたい気持ちを隠しながら、誤魔化しながら、芹菜さんは僕といた。
それに応えるのが、最大の役割だと思っていた。
絶対にここにいてくださいね。
そう言葉を残して、足がもつれながらも向かう。
棚の1番上は、芹菜さんのスペースだ。
芹菜さんはそこしか開けない。
手が震える。
もうずっと、震えている。
棚を開けると、わかりやすく「ナズナへ」と書かれた手紙と、箱が置いてあった。
僕に見せたいもの。
こんな手紙と箱、いつ用意したんだよ。
いつも一緒にいたと思っていた。
ずっと、傍にいたと思っていた。
こんなものを用意しているだなんて、知らなかった。
また溢れてくる涙を拭って、天井を見上げる。
もう溢れないように、芹菜さんの姿を見れるように。
その手紙と箱を持って、玄関へと向かう。
「芹菜さん、見せたいものってこれ？どっちから開けたらいいの」
そう問いかけながら向かっても、声は返ってこない。
聞こえてないはずがない。
狭い一部屋には十分すぎるくらいの声量だった。
少し荒い息遣いでさえも聞こえない。
芹菜さんのひとつでも逃すまいと思っていた声も、匂いも、何も聞こえない。
来てほしくなかった。
もうずっと、時間が止まればいいと思った。
それでも、歩は進んでしまう。
視界に写ったのは、さっきまで芹菜さんが座っていた場所。
もう芹菜さんは、どこにもいない。
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます！！もったいないお言葉です。これからも頑張ります！ (3月8日 11時) (
レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます！！大好きです。これからも陰ながら応援しています！ (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kyon | 作成日時：2023年12月29日 21時
