本当はずっと、守られていた ページ21
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玄関の開く音がした。
本日決行される百鬼夜行。
芹菜さんに待機命令を食らった僕は、ずっとその人の帰りを待っていた。
家に入ってくる人なんて、たった一人しかいない。
ほぼ反射的に、足が追い付くより先に体が動いて、倒れそうになっても。
1番早く、真っ先に駆け付けたかった。
「せ、芹菜……さん？」
「った、だいま」
その姿を見たとき、頭が真っ白になった。
人型呪霊である芹菜さんは、血の色がある。
人間と同じ色。
その血にまみれて、玄関の扉に背を預けている。
そんな姿は見たくなかった。
ずっと笑っていて、元気でいてほしかった。
ほぼ魂が抜けたような体で、でも芹菜さんの傍には居たくて。
ゆっくりと歩を進めて、近づく。
「あいつ、強すぎなんだよ」
「……ど、どうしたんですか？」
「柚姫にやられた。柚姫が出てこなくても、Aにやられてた」
もう長くないんだ、とへらっと笑う。
その意味が分からないほど、馬鹿ではない。
心拍数が上がる。
まだ一緒にいたい。
消えないでほしい。
ずっと一緒にいたかった。
思い描いていた芹菜さんとの未来が音を立てて崩れていく。
崖が崩れるよりも大胆に、大きく削られる。
「お別れだけ、言いに来たの」
「聞いてくれる？」
そんなこと言うなよ。
これからだってずっと一緒だ。
だってもう、芹菜さんがいない日々の送り方を忘れた。
芹菜さんがいないと幸せを見つけることさえできない。
溢れてくる言葉はあるはずなのに、何一つ出てこなくて。
優しい瞳で見つめる芹菜さんに、黙って頷くことしかできない。
「初めて見たあんたは、この世界に絶望しているみたいな顔してて。私も、この世界に絶望してたからさ。どうせなら、一緒に絶望しようと思ったんだ」
「放っておけないとか、嘘ついてごめんね。あんたを巻き込んだんだ」
覚えている。
忘れたことなどない。
誰も見向きもしなかった世界で、芹菜さんだけは立ち止まった。
手を差し伸べてくれた。
芹菜さんの動機はそれでも、僕にとっては最高に嬉しくて、救いになった。
芹菜さんがそうでなくても、僕が「あぁ、この人は僕のことを見てくれている」って思うだけで、楽になった。
脳内に流れるのは、2人の幸せな日々のみだ。
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます！！もったいないお言葉です。これからも頑張ります！ (3月8日 11時) (
レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます！！大好きです。これからも陰ながら応援しています！ (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kyon | 作成日時：2023年12月29日 21時
