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本来なら、そう呼べる間柄だった。
私とあなたは、家族だった。
こうやって戦うはずじゃなかった。
「それはもう捨てた」
「私は最近知った。勝手に捨てられていた」
「仕方がないよ。それが運命なんだから」
そんなこと誰が決めたんだろう。
呪霊は全員悪くて、祓わなくちゃいけなくて。
この世界の頂点に立つのは人間で。
そんなこと、誰が決めたんだろうか。
人はよく神様のせいにするけど、あれもこれも、人間が生み出したものだ。
人間が引き起こした結果だ。
この運命だって、私たちが自ら導いたものだ。
「どうして私を殺さなくちゃいけないの」
「私が呪霊で、あんたが人間だから。ただ、それだけ」
「なんで呪霊になったの」
「あんたに話す理由はない」
どこで狂い始めたんだろう。
どこで後戻りできなくなったんだろう。
いつの間にか全てが壊れていた。
もうこのまま、短刀を振り下ろしてしまえば終わる。
世の中の誰も壊れたことに気付かないまま、静かに終わる。
「……強いて言うなら」
芹菜の口が開く。
手は震える。
「全てが、間違いだったんだよ」
右手から短刀が離れる。
いや、弾かれた。
飛んでいった左側を視界に入れると、刃が曲がった短刀が転げている。
やられた。
急いで飛び退き、芹菜から距離をとる。
私の右側に式神がいた。
短刀がない中で向き合うのは危険だ。
人型の式神。
アレが短刀を弾いた。
あのまま、首に振り下ろしていればよかった。
感情に揺らされた。
自分の弱さに負けた。
「もう戻れないってこと、分かってるでしょ」
「自分で決めた道に後悔はないって言ったのはAだよ」
「自分が呪術師になることを選んだ。だったら、私と戦って祓うの」
どうしてその言葉を知っているの。
その言葉は、芹菜が会ったことないはずのお父様との会話だ。
後悔はないと、あの日言い放った。
もう本当に、逃げ場はなくて。
目の前の"敵"と向き合うしかなくて。
どうして生きている道が違うことに、こんなにも苦しめられなくてはいけないの。
そんなことを問うても、答えは出てこない。
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます!!もったいないお言葉です。これからも頑張ります! (3月8日 11時) (レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます!!大好きです。これからも陰ながら応援しています! (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyon | 作成日時:2023年12月29日 21時