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今度は真っ直ぐに走って距離を詰める。
芹菜は焦っていた。
動揺していた。
こちらのスピードに驚いていたんだ。
虎をあんな使い方をした。
速さだけじゃない、威力も十分にあった虎を無駄遣いかのような使い方だった。
今度の式神は何か。
猫か、人か、狐か。
どれもサイズが大きいから厄介だ。
芹菜の式神全てを知っているわけでもない。
まだ登場していない式神と当たるのも避けたい。
でもそれは、こちらの出方次第。
芹菜の気分次第。
距離を詰め、短刀を振るう。
左腰から右肩目掛けて振り上げた刃は空振りに終わる。
髪の毛が数本、はらはらと落ちる。
当たったと思ったのに。
空振った右手をもう一度、その肩へと伸ばす。
と同時に、後ろから同じ呪力の気配。
飛んでいる。
鳥か。鳥の式神。こいつも、速い。
後ろから突っ込んでくる鳥を避けるように、体を落とす。
落として、どうする。
五条先生なら、真希なら、どうする。
ずっと、見てきた。
近くで、隣で。
戦い方を教わってきた。
立っている芹菜の腹を左足で蹴り、体を落とさせる。
倒れることに抵抗しようとしている芹菜の後ろ襟を掴み、背中と地面を合わさせる。
体を地面に押さえつけ、上に跨る。
芹菜を下に見るなんて、初めてだ。
そのまま、喉元に短刀を突き付ける。
「速いね」
「そっちこそ、鈍ったんじゃないの?」
「この間と呪力量が違いすぎる。柚姫の上乗せとは言いきれないほどに多いよ」
早く。
早く、刺せばいい。
そのまま呪力を込めて首を落とせば、終わる。
「手が震えてるよ」
「そんなことない」
「嘘つかないでよ。ほら、刺せばいいじゃん」
微かに震える右手を左手で抑える。
まともに芹菜の顔を見たのは、初めてかもしれない。
夕日に照らされて少し色付いている長い白髪は、顔を隠すことなく、綺麗に地面に流れている。
原色かと思うほど濁りのない綺麗な紫の瞳は、私の後ろに飛んでいる烏を映している。
喉元が震える。
「おねえ、ちゃん……」
「……は」
それはただの、感情の揺らぎだった。
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kyon(プロフ) - きゃるさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、出会ってくれてありがとうございます!!もったいないお言葉です。これからも頑張ります! (3月8日 11時) (レス) id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
きゃる(プロフ) - すごい作品に出会えたなと思います。素敵な作品をありがとうございます!!大好きです。これからも陰ながら応援しています! (2月22日 23時) (レス) @page23 id: fa1bdc5357 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyon | 作成日時:2023年12月29日 21時