. ページ36
.
誰にも邪魔できない。
私の進む道をこの人は邪魔できない。
強くいられるのは、みんながいるから。
みんながいる場所に帰りたい。
「後悔するぞ」
「勝手にそう思っていればいい。私はもう、ここには戻ってこない」
「あなたの野望に付き合っている暇はない」
この人が言ったことで、分からないことはたくさんある。
私の中に3つの術式が存在していること。
けど、私が使っているのは柚姫だけだ。
3つの術式に関して、五条先生は何も言っていない。
五条先生の目で、分からないなんてことはあるのか。
それに、私の記憶がないのは、私の術式のせいだ。
思い出すことができれば、術式のこともわかる。
思い出すことにリスクがないはずがない。
きっと自力で思い出すには、それなりの代償を背負うことになる。
その代償がわからないのなら、下手に動くこともできない。
ここに戻ったら、本当にスムーズに進むのかもしれない。
愛みたいな犠牲者を出さずに済むのかもしれない。
けど、もう……
「後戻りは出来ない」
「ここに戻って後悔する方が余っ程嫌だ」
もう、振り向かない。
扉を開ける。
いつもは好きな障子も、今は嫌いだ。
この人と同じ空間にいて触れるものは体が拒否している。
廊下にはさっきまでいた人たちはいない。
私がここを完全に拒絶してしまったからだろうか。
もう接待をする必要はないと思われたのか。
それでいい。
私は特別じゃないから。
特別な力を持っているのかもしれないけど、私自身は特別にはなれない。
なりたくない。
こんな家に戻ってくるように言われて気がついた。
今の生活で十分なのだ。
特別じゃなくたって、今のままでいいんだ。
靴を履いて玄関を出る。
外にも音はなかった。
呪霊が動いている音もない。
門が呪霊によって開けられる。
追手は来ていない。
私を引き止める気はないみたいだった。
これでいい。
この家に戻らなくてもいい。
私のことは私で決める。決めた。
私のことなんだから、術式は戻ってくる。
記憶も、必ず。
そう思っているはずなのに
こんなにも不安なのは、どうしてだろう。
.
167人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kyon(プロフ) - r_inaaa6さん» コメントありがとうございます!そのようなお言葉をいただいて、とても嬉しいです!!ご期待に応えられるよう、これからも頑張りますので、ぜひ応援お願いいたします! (11月25日 0時) (レス) @page22 id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
r_inaaa6(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます!今後も更新楽しみにしてます!頑張ってください^^ (11月23日 14時) (レス) @page20 id: ee744ba5ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kyon | 作成日時:2021年3月6日 23時