. ページ30
.
「も、元々、その気しかありませんでしたから！！」
「失礼します！」
先生の手の中から抜け出し、急いで部屋を出る。
心臓はまだバクバク鳴っている。
先生に手を握られたことにも、あの場を逃げるように去ったことにも、どちらにもいろんな感情が動いている。
そういうことするの、珍しい人じゃないけど。
私の気持ちわかっているなら、そんな、中途半端なことをしないでほしい。
部屋から離れるように早足で歩く。
一刻も早くその場から離れたかった。
先生の熱を感じそうな場所から早く遠ざかりたかった。
ズンズン、という効果音がつきそうな勢いで歩いた私は、ふとした瞬間
ロボットの電源が落ちるみたいに、ヘロヘロとへたりこんだ。
あの日から。
先生と会って、手を取ったあの日から。
私は先生について行くと決めた。
先生の手しか取らないと決めたわけではなかったが、きっとそうするだろうと思っていた。
私がそうしたいと思った。
それをあんな風にされると、こっちの心臓だって持たない。
握られていた手があつい。
サングラス越しに見えた瞳にはすぐに目を逸らしてしまった。
先生の顔をまともに見れない気がする。
「Aちゃん？」
「うわあぁ！！」
「ご、ごめん！！」
深く息を吐いて、膝に顔を埋めたときだった。
人の気配なんてなかったこの場に、突然現れた声に飛び跳ねる。
けど、この場から逃げなくてもいいと判断できたのは、その声が聞き馴染みのある声だったからだ。
「あれ、真希たちは？」
「あっちで休憩してる。Aちゃんがいないから、探して来いって言われて……」
「そっか、ごめんね。そろそろ戻るよ」
なんだかいつも困ったような顔をしていた乙骨くんの表情がだいぶ和らいできたのも、つい最近だ。
まだ心臓は収まらない。
けど、今は先生じゃなくてみんなとの時間だ。
私だって、みんなといることで感情を出せるようになった。
柔らかくなったし、明るくなったとも言われた。
けど今は、それが間違いだったみたいで。
「僕、あっちから来たんだけどさ。Aちゃん、物凄いスピードで部屋飛び出してなかった？」
「同じ部屋から五条先生も出て来たんだけど、Aちゃんとは違ってケロッとしてたね」
その、名探偵みたいな喋り方はなんだ。
「前から思ってたんだけど、Aちゃんって先生のことす」
「きじゃないから！！！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kyon(プロフ) - r_inaaa6さん» コメントありがとうございます！そのようなお言葉をいただいて、とても嬉しいです！！ご期待に応えられるよう、これからも頑張りますので、ぜひ応援お願いいたします！ (11月25日 0時) (
レス) @page22 id: c6557ad466 (このIDを非表示/違反報告)
r_inaaa6(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！今後も更新楽しみにしてます！頑張ってください^^ (11月23日 14時) (レス) @page20 id: ee744ba5ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kyon | 作成日時：2021年3月6日 23時
