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「ごめんね。そんなの聞かれても困るよね」
桜井さんは笑う。
苦笑い。愛想笑い。そんなんじゃない。
心から無理してる、
そんな笑顔だった。
そんな笑顔を私は知っている。
そっか、私もこんな風に見えてたんだ。
周りに愛想を振りまいて、嫌われまいとする。
ねぇ、それ、全然笑えてないよ。
全然似合ってないよ。
桜井さんに言ってるようで、私に言ってるみたいだ。
「桔梗さんはさ、どんな人だった?今までの桔梗さん」
今までの私。
親に縛られて、自分ではなかったあの時。
常に大人の理想。私は人形。
そう自分に言い聞かせてきた、あの頃。
「少しだけ、桜井さんに似てるよ」
「……え?」
自分を隠すのも、指示に従うのも。
全部誰かのせいにしてきたけれど
本当は全部自分のためだったのかもしれないと
今になって思う。
防衛のつもりだったんだ。
全然笑えてない笑顔を浮かべるくらい、周りが見えてなかった。
「そっか。桔梗さんは変われたんだね」
桜井さんの目に涙が溜まる。
違う。そうじゃない。
私は何も変わっていない。
私が変わったんじゃない。
「変わらせてくれた、かな」
「今まで、全部人のせいにしてた。自分を出せないのも、隠しているのも、全部。誰かのせいにしてた」
「でも、最終的に決めてたのは自分だった。その嫌な指示に従ったのは私だった。全部、私のせいなんだよ」
親のことを知るまで。
鎖に繋がれていた私は、気付いた。
繋がれていのではなく、繋がっていた。
世界から離れないように、自らその道を選んでいた。
変わるチャンスなんで何処にでも転がっていたのかもしれない。
「でも、」
「大切なものができたの。命に替えてまでも守りたいもの」
__ようこそ呪術高専へ
あの日、あの時。
五条先生について行ったから。
初めて自分から鎖を外そうとした。
変わるチャンスを、今度は離さなかった。
きっかけをくれたのは、間違いなく五条先生と、高専のみんな。
何もない、色のない世界が色付き始めたのは、高専に来てからだった。
そんな高専を、今は守りたいと思ってる。
「守りたいもの……」
「うん。命の恩人もいるからね」
私の脳裏に過ぎるのは五条先生。
夜道、声をかけてきたとき。
その瞬間から私は五条先生に惹かれていたのかもしれない。
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kyon(プロフ) - りりあさん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまって申し訳ないです…私なんかには勿体ない言葉だらけで…至らない点は多々ありますがこれからも頑張っていこうと思います。本当にありがとうございます…!! (2020年11月30日 1時) (レス) id: f88f9a35b9 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - ありますが、登場人物の心情に浸る、といいますか、自分が本当に夢主になった気分を味わえて、読んでいて飽きを一切感じさせられませんでした。素敵な作品を本当にありがとうございます!最後になりますが、kyonさんのペースで無理の無い更新を頑張って下さい! (2020年11月28日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - コメント失礼致します。連投になってしまうことをどうかお許し下さい。漸く時間が空きまして、更新されてる最新話まで読ませて頂きました!本当に時間を忘れて読み込んでしまい、気づいたら…という現象に陥ったのは久しぶりです。それほど内容が濃いというのも (2020年11月28日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
kyon(プロフ) - 檸檬さん» コメントありがとうございます!良いものが届けられるよう、これからも頑張ります!五条先生は神です!!! (2020年11月24日 23時) (レス) id: f88f9a35b9 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - 初コメですが続編おめでとうございます!これからも更新頑張ってください!応援してます!五条先生は神!! (2020年11月23日 22時) (レス) id: a75ba4312e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyon x他1人 | 作成日時:2020年11月23日 3時