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校舎裏。
壁にもたれ掛かるように桜井さんは座っていた。
桜井さんを纏うオーラは切ない。
こっちまで悲しくなりそうになる。
あんなこと言われて、辛くない人なんていない。
「桜井さん」
呼び掛けると肩を震わす。
「桔梗さん…」
「ごめんね。驚かす気はなかったんだ」
隣に座る。
しばらくの間無言だった。
どちらも口を開こうとしない。
会ってそんなに経っていない。
一緒に過ごした時間は少ない。
それでも、この静寂の空間は苦ではなかった。
「私のせいで、ごめんね」
静寂を先に破ったのは私。
伝えたいことを言わないと、ここに来た意味がないから。
伝えれるうちに、伝えないといけないから。
「桔梗さんのせいじゃないよ。謝らないで」
「みんな、桔梗さんの事好きなの。でも話せてない人多くて。少しだけ話せてる私に浮かれて、調子乗ってただけだから」
膝に顔を埋める。
何となく分かってたよ。
転校生だから。
珍しいんだよ、私が。
だから、よく視線を感じるし、声をかけられることも多い。
呪霊を探すために常にスイッチが入っていたからか、周りの音もよく聞こえていた。
私に話しかけるのに、茶化し合う者がいたのも知っていた。
別に誰にも迷惑をかけていないならいいと思っていたけど
こうやって誰かが傷付いているのを見ると、自分という存在が嫌になる。
そして、今回の事は誰も悪くないから余計に心が痛む。
「私、ずっと友達作れなくて。苦手なの。人と話すのが」
「高校になって、少し背伸びしてみたけど性格は全然変わらなかった。周りの子はみんなキラキラしてて、追い付けなくて」
「私が出たら変に思われるから、どんどん自分を隠していって。元々自分なんてないのに、余計だよね」
「ねぇ、桔梗さん」
「普通って何だろうね」
桜井さんの言葉が重くのしかかる。
普通って何。
本当はずっと求めていた。
普通を求めていた。
昔の私みたいで、今の私みたいでもある。
普通の回答は、私への回答にもなる気がして。
桜井さんの問いかけに何も答えられなかった。
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kyon(プロフ) - りりあさん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまって申し訳ないです…私なんかには勿体ない言葉だらけで…至らない点は多々ありますがこれからも頑張っていこうと思います。本当にありがとうございます…!! (2020年11月30日 1時) (レス) id: f88f9a35b9 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - ありますが、登場人物の心情に浸る、といいますか、自分が本当に夢主になった気分を味わえて、読んでいて飽きを一切感じさせられませんでした。素敵な作品を本当にありがとうございます!最後になりますが、kyonさんのペースで無理の無い更新を頑張って下さい! (2020年11月28日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - コメント失礼致します。連投になってしまうことをどうかお許し下さい。漸く時間が空きまして、更新されてる最新話まで読ませて頂きました!本当に時間を忘れて読み込んでしまい、気づいたら…という現象に陥ったのは久しぶりです。それほど内容が濃いというのも (2020年11月28日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
kyon(プロフ) - 檸檬さん» コメントありがとうございます!良いものが届けられるよう、これからも頑張ります!五条先生は神です!!! (2020年11月24日 23時) (レス) id: f88f9a35b9 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬(プロフ) - 初コメですが続編おめでとうございます!これからも更新頑張ってください!応援してます!五条先生は神!! (2020年11月23日 22時) (レス) id: a75ba4312e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kyon x他1人 | 作成日時:2020年11月23日 3時