6.未来は如何程に ページ43
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総合病院。
ここの上層階奥に、お母さんが眠る病室がある。
受付に問い合わせると、案内をするので待合室で待っていてくれとのこと。
お母さんの好きなカスミソウを胸に抱える。
いつもこの花を家に飾っていた。愛おしそうに見つめて。
そして、今でも家に飾っている。
玄関の扉にドライフラワーとして、いつでもお母さんが帰ってきていいようにしている。
昨日の体育祭は、優勝がかっちゃん、準優勝が轟くん、3位が飯田くんと常闇くん。
轟くんは決勝で炎は使わなかったそう。
そして、それにかっちゃんがキレて、表彰式では拘束されて登場したらしい。
かっちゃんらしいと言えば、らしい。
出久くんも怪我が酷かったが、リカバリーガールの治療により、今は包帯をしていれば大丈夫みたい。
飯田くんにもおめでとうを言えなくて悔しいが、メールを送った。
そして、その送った後にヒーロー殺しの話を知った。
以前に飯田くんのお兄さんの話を聞いた。
お兄さんという存在が強かった飯田くんは、今どうしているのだろうか。
真面目だからこそ、ヒーロー殺しのことをどう思っているのだろうか。
どうしてこうも不幸は立て続けに起こるのか。
嫌な気持ちを振り払うように、天を仰ぐ。
病院の天井しか見えない。
当たり前だ。ここは病院だからな。
雄英に入って1ヶ月なのに、こんなにもトラブル続きなのは、大変だ。幸先全然良くない。
上に向けた顔を今度は病院内に向けてみると、エレベーターの中から見慣れた人影が出てくる。
赤と白の紅白の頭が目立つ。彼は、轟くんは、私と同じように下を向いていた。
視線を感じたのか、轟くんが顔を上げ、私と目が合う。
何となく気まずいような気がするが、向こうが軽く手を振ってきたので、私も振り返す。
「昨日ぶりだな」
「うん。準優勝おめでとう」
「1位にはなれなかった」
「充分すごいよ」
轟くんは、私の隣に腰かける。
不慣れな会話が続く。
口数が少ない轟くんの横だと、何だか自分も口数が少なくなってしまう。
今出せる話題は、体育祭しかなかった。
轟くんがここにいる理由は、何となく想像ができたから、その話題は出せずにいた。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
