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あの後、轟くんが炎を使った。
私の叫びが聞こえたのかそうでないのかは分からない。
それでも、あれだけ否定していた炎を使ったのは、轟くんにとっても何かが動かされたのだろう。
そして、出久くんだって諦めやしない。
2人のぶつかり合いがあった。
轟くんの炎、出久くんのパワー。
2人がぶつかりあう前にセメントスが止めた。
しかし、冷やされた空気が熱され膨張し、爆発し、辺りは一瞬何も見えなくなった。
結果は、出久くん場外。轟くん3回戦進出。
2人の決意とやらを感じたし、気迫も威力も何もかも、私とは違った。
どちらを応援していたわけではないので、轟くんが進出して嬉しいし、出久くんが敗退して悔しい。
そして、私は今、彼らに労いの言葉をかけることなく、病院にいる。
「お父さん！お母さんの症状が急変したって…」
「すまんな、A。今、治療室から出たところだ」
お母さんの症状が急変。
それは、学校の先生が慌てて連絡をくれた。
周りが盛り上がったり、心配している中、私はお母さんのことしか頭になかった。
急な運動はまだしんどい。
しかし、そんなこと言っている場合ではない。
学校から病院までタクシーを呼び向かった。
待合室へ行くと、看護師さんにすぐに案内された。
そして、お母さんの病室前にはお父さんの姿。
ガラス張りになっている向こうに目をやる。
この間来たより管が増えている。
肩が上下しているところから生存は確認できるが、その凄惨な姿に思わず目を瞑る。
順調だったから、最近普通病棟になったのに。
また、このガラス張り。ショーケースみたいに。
偉い人がお母さんを観察しに来るのか。
私たち家族は入れない。
「お父さん、ごめん…」
「謝らないで。Aのせいじゃない。今は、待とう」
あの日からお母さんが目を覚ますことはなかった。
それでも待ち続けたのに、これだ。
飯田くんはどうなったかな。
決勝誰が進んだのかな。誰が勝ったのかな。
今、みんなはどんな話をしているのだろう。
その場に座り込む。
轟くんの炎を見ると思い出す。
本当に私の個性は人を助けるためにあるのだろうか。
お母さんとお父さんを傷付けてばかりだ。
本当に、ヒーローになれるのかな。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
