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「おい、大丈夫かよ緑谷」
「轟も動きが鈍くなってきたぞ」
出久くんの指は全滅。腕もボロボロ。
轟くんは動きが鈍い。
許容重量がそろそろ限界近いのか。
でも、轟くんはまだ炎を使っていない。
出久くん、あれはもう…ボロボロだよ。
リカバリーガールは確かにいる。治してもらえるかもしれない。
けど、今の激痛は治らない。
どうしてあそこまで動けるのか。
何をあそこまでつき動かしているのか。
夢というたった1文字が、彼の胸には深く刻まれているのか。
私に、あそこまでの力はない。
出久くんが轟くんへ一撃を入れる。
氷の威力も落ちてる。
何を迷っているのだ。
このままだと負けてしまう。終わってしまう。
左側だって、自分の個性じゃないか。
お父さんの個性じゃない。轟くん自身の個性。
__Aは気にしてるかもしれないけどさ、いいんだよ、自分の個性を信じて。大切なのは過去を引きずることじゃない。未来を生きることだ。
体育祭前日。
お父さんが私に話してくれた。
未来を生きる。正直、私はそれを出来るかと言われると、そうでもない。
弱くて脆いから、過去ばかり見てしまう。
過去ばかり見て、逃げている。
どっちに勝ってほしいのかは、分からない。
どっちの過去も知っている。
無個性だった出久くん。
父親のせいで自分の個性が憎い轟くん。
2人は、違う。
私とは全然違う。
USJ事件で、轟くんは助けてくれた。
オールマイトのこともだ。成績優秀な彼は、常に先を見据えて行動していた。
憧れなんかで踏み込んでいい場所じゃない。
そうやって言ってくれたのは、君じゃないか。生半可な気持ちじゃダメだって。
出久くんだって、あの日夢を諦めた私を最後まで励ましてくれた。
無個性だった君が飛び込むからこそ、周りの人のやる気が奮い立つ。
2人とも、過去も未来も、乗り越えれる人じゃないのか。
強くて、かっこいいヒーローじゃないのか。
席を立ち上がる。前に行き、手すりに手をつける。
私がスッキリしたいだけかもしれない。偽善というものかもしれない。
それでも、
「負けちゃダメだ！頑張れ！！」
「君の！力じゃないか！！」
「(2人同時に来んじゃねぇ)」
この思いが、届いてほしい。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
