. ページ39
.
「戦闘に於いて、
「どうして、轟くんの個性でしょ」
「関係ない。ズカズカと入ってくんな」
「関係ない、けど。それは、轟くんの本気じゃない。私は、轟くんの本気が見たい」
彼の決意を聞いてもなお、私は彼の本気を見てみたいと思う。
氷をあんなに自由自在に、丁寧に使える。
それが炎で行われたらどうだろうか。
炎と氷、両方使ったらどうだろうか。
綺麗だと思う。それは、最高のパフォーマンスだと思う。
轟くんにしか出来ない最高の個性。
今までの轟くんが本気じゃなかったと言ってるわけじゃない。轟くんは氷で1番をとってきた。
それでも、対戦相手は出久くんだ。出久くんだって絶対に諦めたりしない。
氷だけでは、出久くんは絶対折れたりしない。
執念の強さは、かっちゃんと同じくらいなのだから。
「俺は左が憎い。炎はもう見たくねぇんだ」
「そう、かな」
左が憎い。それは、自分の個性が憎いと変換できる。
気持ちは分からなくもない。境遇があまりにも違いすぎるから、同じにしていいのかは分からない。
けど、私だってこの個性を恨んだ。
また夢で見た。炎が溢れ出た。
お母さんが止めに来た。お母さんを傷付けた。
私の個性が炎じゃなかったら、お母さんを傷付けずに済んだ。
私が個性なんて持っていなかったら、今頃幸せに暮らせていた。
お母さんに似て白かった髪の毛も、あの日個性を使いすぎたせいで赤に染まった。
お母さんとお揃いの綺麗な白色だったのに。
そう、お揃い。
私は今でも自分の個性を恨んでいる。
この赤い髪も嫌いだ。
鏡を見る度にあの日のことが蘇って、嫌になる。
轟くんは左の赤が嫌い。私も、嫌い。
轟くんは左の個性が嫌い。私も、嫌い。
それは、ある意味、
「お揃い、だね。私と轟くん」
「…は」
お揃い。私と、轟くん…
顔が青ざめる。全身から何かが抜けて行く。
やばい。言ってしまった。
何てことを言ったのだ私は。
急いで口を押さえるが、時既に遅し。
こんな何も知らない奴にお揃いだねとか言われて、やったーありがとう！となる奴がどこにいるんだ。
そして、相手はあの轟くん。
やらかした。凍ってしまう。
凍らされて、誰にも気付かれず、凍死してしまう。
「ご、ごめん！本当にごめん、今のは忘れて！」
言い逃げというやつだ。
私は轟くんの反応を見もせず、その場を駆け出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
