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「麗日さん！」
「Aちゃん！もう体調大丈夫なん！？」
第1試合が始まる前、飯田くんと出久くんが麗日さんのところに行こうとしていたので、私もついて行くことにした。
結局、あの後はかっちゃんと一言も交わさぬまま。
頑張ってねの一言くらい言えばよかったなと今更後悔。
轟くんの話は、何だろう。なんて言ったらいいのか分からない。
私が踏み込んだらいけない領域な気がする。
なんて言うのは言い訳で、踏み込む勇気がない。
「麗日さん、おめでとう。第1試合、かっちゃんとだけど、頑張って！」
「うんっ！正直不安やけど、Aちゃんの分も背負って頑張る！」
私の分は背負わなくていいよ。
麗日さんと私、2人分の思いを背負ったら、負担がかかってしまう。
かっちゃんの言葉を借りるならば、私はクソモブだから放っておいていい。
けれど、麗日さんの気持ちは素直に嬉しい。
ただの体調管理不足だったのに、そうやって言ってくれるのは。とても、嬉しい。
飯田くんと出久くんも、麗日さんと言葉を交わす。
3人とも友達だ。こうして、前に集まって声をかけ合うのは、とてもいい関係だと思う。
出久くんがかっちゃん対策に、とノートを差し出す。
ヒーローオタクの出久くんは、個性の凄いかっちゃんも観察している。
私には分からない細かい勝利ポイントも書いているのだろうか。
でも、麗日さんはそれを断った。
「デクくんは凄い！どんどん凄いとこ見えてくる」
「騎馬戦の時、仲良い人と組んだ方がやりやすいって思ってたけど、今思えばデクくんに頼ろうとしてたんかもしれない」
2回戦、騎馬戦だったのか。
それで、出久くんと麗日さんは組んだのか。
出久くんが騎手なら、他のメンバーにもよるが、いいペアだと私は思う。
「だから、飯田くんが「挑戦する！」って言ってて、本当はちょっと恥ずかしかったんだ」
「皆将来に向けて頑張ってる！そんなら皆、ライバルなんだよね…だから、」
「決勝で会おうぜ」
麗日さんが親指を立てる。
いつもの柔らかい笑みじゃない。強ばっている。
手だって、震えている。
緊張しているのか、怖いのか。
それでも、麗日さんは弱くなったりはしない。
寧ろ、皆をライバルとして見て、更に上へと行こうとしている。
これも、麗日さんの決意なのだ。
部屋を出ていく麗日さんに、私は心の中で応援することしか出来なかった。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
