4.体育祭前夜 ページ25
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「そうか、明日は体育祭か！」
「うん。大変なことがあったけど、だからこそ雄英の危機管理体勢が磐石だと示す…みたいなこと言ってたよ」
夕飯。
一般家庭ほどの大きさのテーブルをお父さんと2人で囲み、食事を摂る。
家はあまり裕福な家庭ではないため、ごく一般家庭と一緒の食事内容だ。
体育祭前だからと言って、あまり張り切りすぎると疲れるだろ、という父の計らいもある。
「体育祭で活躍すると、沢山のスカウトがあるんだよな」
「うん、けどあんまり期待しないで。みんな強いんだ」
「そんなに気にしてないよ。父さんは、Aが頑張ってくれたらそれでいいんだ」
あの父の柔らかい笑顔を向けられる。
その面影にはどこか母の姿も感じられる。
2人は夫婦だから、血の繋がりなどないけれど、似ている部分がある。
雰囲気だったり、性格だったり。
だからこそ2人は結婚したのだと思うし、私もここまで育ったのだと思う。
結果ではなくその過程。
私の頑張る姿を見れただけで嬉しい。
両親はそういう人だった。
幼稚園の運動会のかけっこ。
お父さんと毎日練習してたのに、結果は最下位だった。
それでも、父と母は褒めてくれた。
金だけに価値があるんじゃない。それまでの過程に価値があるんだ。
Aが頑張ってる姿は、1番かっこよかったよ、って。
たかが幼稚園のかけっこだ。
それでも子供の私でも分かるように優しい声色で、私という人を見てくれた。
「…お父さん。私ね、後悔してるんだ、お母さんのこと」
「だから、だからこそ、私頑張るよ。この先後悔しないように、笑って過ごせるように」
「正直、ヒーローに皆みたいに強い意志はない。けど、私らしく頑張るよ」
お母さんが目を覚ました時、笑って報告出来るように。
お父さんは、またあの笑みを向ける。
自分の好きな唐揚げを1つくれた。
お父さんとお母さんの為にも、私は頑張りたい。
ヒーローになりたいその意志を、もっと明確なものにしたい。
体育祭前夜。
食事中だが、そう願った。
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作者名：kyon x他1人 | 作成日時：2021年5月22日 21時
