ただのゲーム ページ8
焦らすように、ゆっくりと、口の温度でやわらかくなってきたチョコがまとわりつくポッキーを食べ進める。
ポッキーを挟んで十センチ先には、ぎゅっと目を瞑った大倉の綺麗な顔。よほど恥ずかしいのか、必死にチョコのかかっていない所を、なんとか折らないように咥えている。しかも、俺の服の裾を握りしめて。
静かな昼下がりの部屋に、ぽり、ぽりという音だけがすることに僅かながら興奮する。
大きな窓から見える、黄色がかった雲が太陽を隠すのと同じタイミングで、ふにふにとした唇に触れる。角度を変えて、いろんな角度から唇を重ね合わせる。
大倉の唾液で軟らかくなったクッキーを咀嚼する。甘いクッキーと、大倉の味がする。一度唇を離したが、飲み込んだのと同時に、もう一度唇を重ねる。
舌で唇の端にある小さなほくろを舐めると、困ったような顔をしながら、おずおずと唇を開いて俺の舌を迎える。
舌を絡ませたり、歯列をなぞったりしていくと、温度が溶け合っていく。重力に従って、二人分の唾液が大倉の口の端を伝う。親指でそれを拭い、そのまま右手を顎の骨格へ這わせる。
手が触れるかどうかの程度で撫で上げると、体がぴくっとする。それが可愛くて、何度も反応を楽しむ。
部屋のトーンが暗くなり、細い雨がシャワーのように降り注ぐ。それに紛れるように、重なった唇から、ぴちゃぴちゃと音が漏れる。
「んっ、」
不意に、大倉が俺の鎖骨の下を押してキスを避ける。はぁ、はぁと口で呼吸をしながら、目に涙を貯めて俺を見上げる。自分から離れたくせに、もの足りなさそうな顔をしている。
「なぁ、まだシてほしいんやろ」
「そんな、こと、なぃ」
言い終わるかどうかのタイミングで、もう一度唇を重ね合わせる。
服の裾を握る手を取り、指と指を絡ませて、二人でソファーの海へと沈んだ。
読んで頂きありがとうございました
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作者名：柳 | 作成日時：2021年3月2日 17時
