きらきら ページ1
EDMの重いビートが疲弊した身体を殴る。
貸し切りにされたクラブハウスの細い通路を抜けるとホールは毒々しい色のライトが点滅し、酒とタバコと香水で満ちていた。黒いスーツとスパンコールのドレスが絡み合う。
大声で笑い合い、千鳥足でステップを踏む男と女に嫌気が差し、ホールの隅にあったバーカウンターへ向かう。
ついさっき終わった闘争を思い出す。
俺が所属している組、アハトは隣のサブアを一週間もかかってようやく潰した。
俺はアハトの第一戦線の一人で最年少だ。
「おーい、亮ー」
とカウンターに座った小柄な奴が手を振ってきた。
「あっ、章ちゃん、ここで何してん」
「そんなん見たらわかるやーん今みんなで飲んでてなー」
コイツは安田章大、俺の同期でヤスって呼ばれてる。
どんな状況でも『易々』と相手を殺し『章』という文字の通り、『現れた』と思へば即座にコイツの武器である金属バットで思っきり殴られる。
カウンターには第一戦線の俺、章ちゃん、先輩のすばるくんと横山くんが揃っていた。すばるくんは『昴』のように煌めく日本刀で相手を斬る。横山くんは『横死』、つまり事故や偶然を装って相手を静かに殺す。
俺は錦戸亮、得意の銃を使って鮮やかな『錦』のように『大量』に仕留める。
「あっ、俺レッドライオン」
「またどっくん甘いもん頼んどる」
「ええやんけ別に」
「ヨコにそんなキツくあたると泣いてまうで」
「んな訳ないやろ」
「っぱーん 只今戻りました マルちゃんでーす」
「誰も待ってへんわ」
「おう、来たでー」
ステップを踏みながら現れたのはアハトの特殊部員、マルと村上くんだ。
マルは“掃除屋”と呼ばれる闘争の後処理班だ。普段は天真爛漫なくせにスプラッタ映画が好きな奴で、何事も無かったように『丸々と』現場を片付ける。
村上くんは、他の組に近づいて情報を盗んでくる、いわばスパイだ。その時に使う名前が『ムラカミ』。
原則、俺らの本名は活動に支障をきたさないよう、呼んではいけない。皆の名前はコードネームで呼び合う事になっている。
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作者名:柳 | 作成日時:2021年3月2日 17時