君だけの ページ18
年上とおぼしき、新雪のような白肌の少年が部屋に入ってきた。
「わからない事があったら何でもこの子に聞いてね」
それまで澄ました顔をしていた彼は、驚いたように園長を見上げた。
そんな彼をお構いなしに「じゃあ、よろしくね」と古い型の眼鏡の奥で年老いた目を細めた。
叔母さんにほら、挨拶してと促されて小さく口の中で「よろしくおねがいします」と言った。
戸惑っていた少年が「おん、よろしく」とぎこちなく言い、大人だけが微笑む空間に二人だけが取り残された。
「では、園長先生宜しくお願い致します」
他所行きの笑顔で、叔母さんが一人で場を去ろうとするので、顔を見上げると
「あら、まだ言ってなかったわね。あなたは今日からここで暮らすのよ。それじゃあね、」
と、肩の荷が下りて安心したように告げられた。
あぁ、またか、と何度も繰り返される状況を俯瞰していた自分に嫌気がさした。
「外までお見送り致します」と園長が部屋を出ると、気まずい沈黙が続いた。
「寂しないん、自分」
突如かけられた言葉に振り向くと先程の少年がこちらを見ていた。
何度もループするように流れていく時間に慣れていたので、頷くとふぅん、と返された。
「せやったら、荷物持ってこっちや」
先程まで戸惑っていた表情が抜けて頼れるような表情になった彼の、この地区では珍しかった言葉に不思議と懐かしさを感じた。
叔母さんが持ってきたくれた大きなボストンバックを肩に掛けるが、かなり重くて歩くのがやっとだった自分の姿を見ていた少年が、
「ん、」
と、手を差し出してきたので、意図を汲み取れずにいると
「、持ってやるから、はよ、」
と、少年の不器用な優しさが見えた。
誰かに優しくされるのが久しぶりで、思わず頬を緩めると、雪のような顔に赤みが差したように思えた。
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作者名:柳 | 作成日時:2021年3月2日 17時