月下美人 ページ13
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「...っ、!」
"幸せだった" と言う彼女に
透明になっていく彼女に
全てを悟る
そうか、ぜんぶ
全部、そういうことだったんだ
...嫌だ
まだ、この夢から覚めたくない
「嫌だよ、Aちゃん..っ、君がいないと俺...!!」
「...莉犬くん」
「俺は...っ、君が...!
好きだから...っ」
君の目が大きく開かれる
嗚呼
最後の最後に、こんな形で、
伝えたくなかった...
「...あのね、莉犬くん 。」
先程まで俯いていた君は、
此方を見て柔らかな笑みを浮かべた
「私、月下美人を育ててたの 。月下美人は、年に何回か
しか咲かない、そして夜にしか咲かない花なんだけど 。
とっても、綺麗なの 。」
月下美人 。聞いたことがある 。
本でも、見たことがあると思うんだけど
小さい頃の記憶だからか、思い出せない 。
...でも突然、なんで花の話...?
「それでね、私、自分の月下美人が咲くまでは...
って、多分あの日に思ったんだろうな 。だから、
今までこうしてこの世界にいれたんだと思う」
「...それって」
「うん 。今日、もう咲き始めるよ 。
私も、それと同時に消える」
「...!...嫌だ」
また、涙が溢れてくる 。
君の瞳からも、静かに涙がこぼれた
もう今にも消えてしまいそうな程儚い君の姿は
満月の月の光に照らされて、
それこそ、月下に咲く花の様だ
「ねぇっ、Aちゃん好き、好き!俺を置いて行かないで!」
「...私、莉犬くんともう話せないのが悲しいな」
好きや、ごめん、さえ
返してくれない
Aの俺への気持ちはやっぱり、
俺とは違う感情なんだ
「酷い 。Aちゃんは、本当に、酷い よ...」
俺をこんなに惚れさせておいて、
自分は花が咲いたらもう悔いがないって消えるの、?
「...っ、こんなに 、好きなのに...っ!!」
「莉犬くん...ごめんね、もう、時間みたい」
はっ、として顔を思い切り上げた
彼女はもう消えかけていた
...月下美人が、咲くんだ
「今度家のお花屋さん行ってさ、月下美人、見てみてよ」
"とっても、綺麗だからさ"
「...うんっ」
「親友さん達とは仲良くするんだよ」
「うん...!」
「最後に 。
私も、好きだったよ」
唇に、柔らかいものが触れた気がした
呆然とする俺の目の前で、Aが微笑む
そして、甘い甘い残り香を残して静かに消えた
―――彼女は、月下美人だった
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月餅(プロフ) - 紫呉さん» すっごく嬉しいです、ありがとうございます...!花言葉と話の内容が上手く結びつけられて個人的にもお気に入りです(笑)他の作品の更新、がんばります!! (2021年7月11日 10時) (レス) id: f3182ca5ac (このIDを非表示/違反報告)
紫呉 - もう、お話が奇麗すぎて…マジで感動しました。このお話のおかげでいろんなお花を知れました、とっても面白かったです!!違う作品の更新も待ってますね!これからも応援してます! (2021年7月4日 11時) (レス) id: 8b07943982 (このIDを非表示/違反報告)
月餅(プロフ) - バナナくんが尊いさん» 応援ありがとうございます!細部まで工夫だなんて...そう言って頂けて凄い、嬉しいです(笑) (2021年4月4日 15時) (レス) id: f3182ca5ac (このIDを非表示/違反報告)
バナナくんが尊い - ニゲラ、ね。花言葉が鍵なのかな…??細部まで工夫されていて、とても素敵でした!応援させていただきます! (2021年4月4日 9時) (レス) id: afebd09899 (このIDを非表示/違反報告)
月餅(プロフ) - 桜あややさん» わああ、嬉しい...( 涙 ) 更新がんばります、ありがとうございます! (2021年3月28日 16時) (レス) id: f3182ca5ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月餅 | 作成日時:2021年3月26日 7時