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「は...?」
「私はるぅとくんの病気の事をよく知らない 。でも例え
どんなに辛く重い病気であっても可哀想だとは思わない」
「...どういう意味ですか」
「私は、るぅとくんが信じる気持ちを持ってないことが可哀想
だって言ってるの」
彼女は僕の頬から手を離すと目を伏せる 。
「るぅとくんの病気は限りなく治る可能性の低い病気なのかも
知れない 。けど、私は最後まで諦めて欲しくない」
「......」
「信じて欲しい 。ほんの僅かの可能性でも、残ってるなら 。
自分から死を選ばないで」
はぁ..?
思わず苦虫を噛み締めたような顔をしてしまう 。
...なんて、お手本のような完璧な綺麗事なんだ 。
まるで物語の主人公のようだと思った 。
自分を散々貶し侮辱した相手でも優しく許してしまう
どこまでも甘く馬鹿な人間 。
...でも僕は知っている、分かっている
そういう奴ほど、溢れんばかりの優しさを他人に押し付けて
凍りついた心をも溶かして、満たしてしまう癖に
自分の都合だけで簡単に
いつだって自分勝手で残された側の気持ちなんか考えてない
辛さも痛みも苦しみも
一度優しさを知ってしまうと失ったときそれはもっともっと
ずしりと重く辛く痛く苦しくなって
__死んでしまいたくなるのに 。
「大嫌いだ」
思わず唇を噛み締めて何かが沸き上がってくる感覚を
ぐっ、と堪える 。
そして彼女を精一杯睨み付けた 。
「貴女みたいな人がいるから、僕に優しさなんか与えるから
失ったときが怖いんだ」
「私はずっとあげる」
「嘘だ!前もそう言って僕を置いていった」
「それは誰のこと?私は置いていかない 。信じて」
「...なんでそこまで自信を持って言える?」
「信じることが大事なんだよ 。例え絶対無理だと思っても
口に出せば何か変わる可能性がある 。私はそう思ってる」
また言い返そうと口を開くも、言葉が詰まる
駄目だ、勝てない
僕を見つめる彼女の瞳は綺麗で、真っ直ぐで
もう信じられないなんて思えなかった
「...馬鹿じゃないの」
「ふふ、何とでも」
苦し紛れに吐いた軽い悪態を彼女は柔らかく微笑んで
受け流す
頭を撫でるその小さな手はどうしようもなく心地よくて 。
僕はその瞬間から彼女の温もりに溺れてしまっていたんだ
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水森千紗 - 月餅さん» こちらこそです〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!続き!頑張ってください!!! (2021年9月26日 7時) (レス) id: 1f7aa92db8 (このIDを非表示/違反報告)
月餅(プロフ) - 水森千紗さん» いえいえ(*´-`) これからも本作品をよろしくお願いします (( (_ _*) (2021年9月25日 23時) (レス) id: f3182ca5ac (このIDを非表示/違反報告)
水森千紗 - 夜遅くになってしまって申し訳ないです・・・。でも、これからも見ていかせてください!!!! (2021年9月24日 21時) (レス) id: 1f7aa92db8 (このIDを非表示/違反報告)
月餅(プロフ) - 水森千紗さん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです(*´∇`*) (2021年9月24日 18時) (レス) id: f3182ca5ac (このIDを非表示/違反報告)
水森千紗 - 初コメ失礼します。すごく心に刺さる作品で、素敵だと思います!!続き楽しみです!! (2021年9月23日 21時) (レス) @page5 id: 1f7aa92db8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月餅 | 作成日時:2021年9月15日 19時