0.2回帰 ページ3
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赤塚マンション432号室にて。
白い息を吐きながらかじかむ手でドアを開ける。
電気はついておらず暗い｡部屋の中は冷たく冷蔵室のようだ｡
あえて電気はつけずリビングへ足を運ぶ。
防寒具を着けていても身震いしてしまうほどに冷えていた｡
『ただいま』
返事はない｡
ふと窓の方を見てみればカーテンの
向こう側に映る小さな人影。
ドアが少し開いていてヒューっと吹き
隙間風が肌を刺激していく｡
そっと近づいてベランダを覗くと
一人の男性が縮こまっていた。
『風邪､引いちゃうよ』
「...｡」
『暖かいココア入れるから､中に入ろ』
男性は一向に動く気配を見せない。
一体､どれ程の時間この場所でこうしていたのか。
仕事に行く前つけておいた暖房も
いつの間にか消されてて今じゃ外の気温と変わらない｡
「...｡」
どうやら中に入るつもりはないらしい。
私は一旦自室へ戻り
ふかふかの毛布を彼に被せた｡
ついでに自分の分も｡
彼の隣にくっついて不安に座ってボーッと空を眺める｡
星なんて何処にもなくてどこまでも続く暗闇｡
見えるのは小さな三日月とホテル街の灯りだけ。
けど､その光景がどの美しい景色よりも綺麗に
見えるのは私が異常だからだろうか｡
『ねえ､また死のうとしたでしょ｡』
「...｡」
『ひどいよ｡私を一人置いて逝こうなんて』
「...｡」
『薄情な奴だね』
肩がピクリと揺れた｡
『勝手に死のうとした罰としてしばらくは死んじゃダメね｡
さ､中に入って一緒にお風呂入ろう｡』
「...うん｡」
彼に手を差し伸べればゆるりと
立ち上がって私の手を握ってくれた｡
その行為だけで胸が踊り出しそうなほど
舞い上がってしまう辺り､私はよっぽど単純だ｡
それくらい彼に惚れている。
『好きだよ｡一松くん』
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作者名：奇跡の創作者 | 作成日時：2020年4月21日 21時
