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「Aちゃん、迎え来てるわよ」
お妙さんは、ふふふ、声を漏らしながら、今日の頑張り分が入った封筒を手渡してくれた。意味深な笑みが気にかかり聞いてみるも「行けばわかるわ」…と、外に行くよう促されるのみで教えてもらえず。
封筒をしまい入れ、お店の人たちに一通りお礼と挨拶を終えてから外へ通じる扉を通り抜けた。
(…つ、疲れた…。)
お店から一歩外へ出れば、張り詰めていたものが切れ、どっと足取りが重くなる。気遣いからくる疲労に息を吐く。早く銀さんと帰ろう。
分かりやすい所で待っていてくれてるとは思うけど、近隣のお店も軒並み営業時間を過ぎたようで、町を彩っていたネオンも眠りにつき、周囲は薄暗い。
…ほんのちょっぴり心細くなっていると、突然上から薄い布状の物体が降ってきた。ただでさえ悪い視界が塞がり、慌てて取り払うようにそれを掴む。
「…! どうして
「臭うんだけど」
ひらけた世界の先にいたのは、無機質な笑みを張り付けた神威さんだった。継続されている機嫌の悪さは口調からうかがい知れる。…ぎ、銀さんめ。
ふと、掴んだままの物へ目を落とす。
これ、神威さんがいつも羽織っているマントだ。どうして被らされたのだろう。考えている間にマントを被り直させられた。全身をマントで覆われ、顔だけ出した状態はまるでジブ●のカオ●シ。
「…に、臭ってすみません…」
臭いものには蓋をしろと言わんばかりのその行動にショックを受ける。なんだろう、お店の匂いかな。自分では臭いの元が分からない。
無言で帰路を行く神威さんについて行きながら、体を嗅いでいると二の腕を掴まれ、向き合うように向きを変えられてしまった。
「もしかして、わからない? こことか、ここ。
…嗚呼 ここもだね」
人気のない道の真ん中で、神威さんの手によってはだけさせれた首筋。そこから順番に手首、胸元にと顔を寄せられてはわざとらしく鼻を鳴らされた。
「ね、どんな風に男に媚びたの?」
「!」
「いいよね、女は。男に愛想ふりまいて媚びてればいいんだもん。胸とか尻触らせたの?あ、揉ませるほど胸なかったっけ? ああいう店の女は機嫌取りに自分から寄って来たりするけど、」
「……。 神威さん」
口数が多い時は、苛立っているとき。万事屋を出る前と変わりない神威さんの態度を分かっていながら、迎えとしてよこした銀さんを問いつめたくなるも、私はそれよりも先に聞かなければならないことが出来てしまった。
「神威さんはそういったお店によくいかれてるんですか?」
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは!夢主さんが幸せでいられる事を願います。面白かったです。 (6月6日 10時) (レス) @page42 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
おふ - 一気読みしました!!(´TωT`)まじ最高でした!!ありがとうございました!!! (2022年9月23日 16時) (レス) @page42 id: 7784361647 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - うりえルさん» どれも私には勿体無いお言葉ばかりでじんわりきました…( ; ; )たくさんの素敵な小説の中 夢中になって頂けた事、嬉しいコメントも頂けてこの作品を書き始めて本当によかったです…!こちらこそ最後までお付き合い下さりありがとうございました!(*´▽`*) (2021年4月26日 20時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
うりえル(プロフ) - 完結おめでとうございます。まず私はこの作品が大好きです!毎回兎少年と一週間の更新を楽しみにしていました。最後までおいもさんらしくて涙が出てきそうでした。私は初めて夢中になった小説です…もう感謝しきれないほど…。兎少年と一週間制作、誠にお疲れ様でした。 (2021年4月25日 4時) (レス) id: 45d3b70981 (このIDを非表示/違反報告)
おいも(プロフ) - 七瀬未来さん» な、な、七瀬さん〜!! ありがとうございます!褒め言葉の胴上げに浮かれてしまいそうになりました…(*´ `*) 更新が止まってしまったりと予定より長引いてしまいましたが最後までお読み頂けてとっても嬉しいです(∩´∀`)∩! (2021年4月21日 2時) (レス) id: 70decc27f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいも | 作成日時:2020年9月18日 1時