【2j3j】誘拐先は吸血鬼の館でした【ⅱ】 (ページ12)

今日:77 hit、昨日:257 hit、合計:30,155 hit

来てもらうよページ12

A side

＿＿＿人間と吸血鬼が一緒に居て、良いことなんて何一つ無いんだよ！

苦しそうにそう叫んで、剣持さんは部屋を出ていってしまった。
吸血鬼の皆さんと少しずつ打ち解けていけていると思ったのに、振り出しに戻ったような気分だ。

彼らは私たち人間なんかよりずっと狭い思いをしてきたのだ。不満や怒りがあるのは当然だし、それを全てわかってあげることもできないのかな。

ため息混じりに机に突っ伏した。その時。

「あれれ？ご機嫌斜めかな、マリー。」

そんな明るい声が聞こえてきて、私は勢い良く顔を上げた。

『だ、誰…！？』

「ようやく見つけたよマリー。まさかこんなところに居るなんて。」

雲隠れしていた月がみるみるうちに顔を出す。伸びてくる月光に照らされて、声の主の姿が顕になった。

紫の髪に黄金色の瞳。そしてすらりと伸びた脚が図書室の大きな窓枠にかけられていた。

この人、ここの館の人じゃない。
もしや政府の人間…！？でも黛さんお手製のトラップを簡単に潜り抜けられる人間なんて存在するのだろうか？

というかそもそもマリーって誰だ。私の名前はAで＿＿あっ。

『まさか……吸血鬼？』

「鋭いね。どうしてわかったの？」

『吸血鬼はみんな私のことを“マリーブラッド”って言ってたから。』

「なるほどね……その勘の良さに免じて自己紹介してあげる。俺は渡会雲雀！世紀の大怪盗だよ。」

『大怪盗…！？』

「うん。てことで、今夜はこの館1番の宝物である君を盗みに来た。」

言い終わるや否や、渡会さんが私の腕を強く掴んだ。
あまりの強さによろける私を抱きとめ、渡会さんは満足気に笑った。

「さぁ。俺たちと来てもらうよ。」