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帝統さんがうちを出たのは
早朝だったらしく、
俺は気づくことができなかった。
( あとで電話しておこう… )
申し訳なさもあるけど、手早く準備をして家を出た。
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今日も変わらず二郎と登校して、教室に入る。
すると、他クラスの子が俺のところに来た。
「ねえ!Aくん、ヨコハマディビジョンの雑誌の写真!君が撮ったんでしょ?!」
「えっ…う、うん。」
勢いすごくて圧倒されてしまう。
「やっぱり!撮影者のとこAくんって書いてたから〜!」
そう言ってその子は俺を頭の先から舐めるように見た。
「え、えっと、何?」
わざわざ俺のとこに来たってことは、何かあったんだろう。
俺が聞くと、彼女は勢いよく頭を下げた。
それはもう、ヒュンッて風を切る音が聞こえるくらいの。
まるでジェットコースターだ。
「お願い!理鶯さんのサインが欲しいの!」
まるで「おねがい!○○くんにチョコ渡して!」みたいな、バレンタインを想像させる言葉。
俺だって、誰振り構わずラッパーとコミュニケーションが取れるわけじゃない。
特に、理鶯さんは森に暮らしているから会うに会えないし…
「えっと…理由は?」
俺がそう尋ねると、彼女は今度は涙をためて
「場所かえてもいい?」
と言った。
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「…あのね、姉が長くないの。だから、大好きな理鶯さんのサイン見て、ちょっとでも楽しいって思って欲しくて…。」
ぽつり、ぽつり彼女は話して
ついにこらえきれなかった涙が溢れたようだった
頭を下げて、声を震わせるその子は
もしかしたら、嘘をついているのかもしれない。
今まで、こんなのは何回もあった。
けど、この子は本当な気がした。
理由は特にないけど。
「ちょっと時間かかるかもだけど…それでもいい?」
俺がそういうと、彼女は顔を上げて、
涙で顔をぐしゃぐしゃにして、笑った。
( なんだかモヤモヤする )
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『今度の祝日、理鶯さんのところに行きたいので、経路を教えてください。』
銃兎さんにメールを送る
10分ほどで
『いいですよ。迎えに行きましょうか?』
と返ってきた。
『ありがとうござます。お願いしてもよろしいですか?』
『はい。それでは理鶯にも伝えておきます。』
やりとりを終え、あの子のことを考える。
「きっと、もらってきてあげる。」
さっきのモヤモヤもポツリと言ったのも
彼女が可哀想だからとかじゃなく、
俺がなんだか寂しかったからかもしれない。
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ちゃんく(プロフ) - すらいみーる@元もちづきさん» わ〜!嬉しいですありがとうござます!続編がんばります(^^) (2018年10月18日 7時) (レス) id: dbc9699b6c (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんく(プロフ) - かなめさん» ありがとうござます!続編ですね!頑張ります(^^) (2018年10月18日 7時) (レス) id: dbc9699b6c (このIDを非表示/違反報告)
すらいみーる@元もちづき(プロフ) - まだまだ読みたいので私も続編希望です!!! (2018年10月15日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
かなめ(プロフ) - 続編希望です!!! (2018年10月15日 19時) (レス) id: 1c0cf9ebd2 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんく(プロフ) - 松の葉さん» お褒めの言葉めちゃくちゃ嬉しいです( ; ; )受け主やっぱいいですよね!更新頑張ります!これからもよろしくおねがいします!(^^) (2018年9月30日 22時) (レス) id: dbc9699b6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃんく | 作成日時:2018年8月21日 7時