彼に好きって言ってみた[暗殺教室] (ページ25)

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今宵、君に酔う × 學峯ページ25

『一夜限りの夢を』の続きです！

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これは私が、妻に出会う前の話。

私には、想いを寄せる女性がいた。

『……學峯さん？』

私はどうしてしまったのだろう。

いけない。

そう分かっているのに、彼女を押し倒し、退こうともしない体は、理性とは全くかけ離れた何かに支配されているのだろうか。

いや、そんなのは言い訳だ。

結局はAのことが好きで、でも届きそうにない手が忌まわしくて。

だからこんな風に実力行使のようなことを……。

『……酔ってます？』

いいえ、一杯だって飲んでいませんよ。

しかし彼女にすれば、私が酔っているとしか考えようがないのでしょうね。

『じゃあ……』

言おうとしたことなんて、分かっている。

どうしたのか、とか、退いて、とか。

拒絶されるのが嫌で、その言葉から目を反らすために、彼女に口付けた。

『……んっ……んん…』

それをだんだん深くしていけば、今まで私を押し返そうとしていた彼女の手からも力が抜けて、抵抗が乏しくなる。

私はそれを、受け入れてくれていると、そう感じてしまったのだ。

ただ、力でねじ伏せただけなのに……。

『學峯さ……』

目が覚めて隣に愛しい人がいるというのは、こんなにも素晴らしいことなのか。

そんなことに、今初めて気がついた。

しかしAの口から発せられる、次の言葉がどうしても怖くて、

「すみませんでした」

そう、私は謝った。

都合よく許してくれるはずがない。

もしかすると、もう 2 度と口だって聞いてくれないのかもしれない。

でも昨夜のAを見ていると、私は自分のことを少しでも好いてくれているのではないか、とそう錯覚した。

だけどそれも、結局は一夜限りの夢。

朝になれば、訪れるのは、残酷な現実。

『こちらこそごめんなさい。では』

そう言って去っていく彼女の背中が、いつもより小さく見えて、弱々しく見えて。

私は自分でも気付かないうちに、彼女の手を掴んでいた。

『どうしたんですか？』

こちらに振り向くこともなく言う。

あまりの冷たさに、自分がしたことの罪深さに気付かされる。

「いえ、なんでも」

そうしてまた嘘をつく。

Aを傷つけまいとして。

しかし傷付きたくないのは、結局は自分だ。

私はその後、妻に出会う。

それでもこの想いは、忘れられそうにない。