彼に好きって言ってみた[暗殺教室] (ページ21)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:210,701 hit

純白の鼓動 × 陽斗ページ21

「A？」

『……前…原くん…』

成り行きというか、衝動というか、バレンタインというイベントに興じて告白してしまった私。

あの時のことを後悔している。

告白したことに後悔するなんて、それもどうかと思うけど。

「…待て、逃げるなって」

あれから1ヶ月間、前原くんと話すことは極力避けていたり、目があってしまったら反らしたりと随分酷い態度をとってきた。

今も、気まずくて仕方ない。

踵をかえして逃げようとしたところ、腕を掴まれた目論見は撃沈。

『あ、あのことは気にしなくていい、から』

久しぶりにちゃんと交わったお互いの視線。

辿々しく告げると、自分で言ったはずなのに、なぜか切なくなってしまった。

忘れてほしくなんかない、ちゃんとした返事が欲しい、でもそれを聞くのが怖い。

「は？」

反らしていた視線を再び彼の方に向けると、前原くんは何とも言い難い表情をしていた。

怒り、悲しみ、はたまたかけ離れた何か。

そんな歪な感情を、顔に貼り付けていた。

「今さら、忘れられるはずないだろ」

腕を掴んだまま壁際に追いやられ、そのまま壁ドンという、女子が憧れる状態になる。

『何でよ。それよりやめて、からかわないで』

「からかうなは、こっちの台詞だよ」

気まずくて反らしていた視線を強引に合わされ、しっかりと目が合う。

「俺はAのこと好きだ。だからあの日だって嬉しかったのに……」

“返事しようとしたら逃げるし、しかもそれからずっと避けられてたし”

長い睫毛を少し下に向けて、今にも泣き出しそうな大きな瞳。

それに、なんだか愛しさが込み上げて。

……ｷﾞｭｯ……

掴まれていた手も振り払って、思いっきり前原くんに抱きついた。

前原くんは、少しよろめいて驚く。

「い、いきなりどうしたんだよ」

私の心臓は、大きく脈打つ。

『前原くんは慣れてるかもしれないけど、私は初めて言うんだよ……』

“大好き”

前原くんの鼓動と私の鼓動が、重なりあった。

▽next▽

磯貝くん