つよしのネタ帳~光一夫妻のちょっと変わった日常~

その21「うわさ話」 ページ40

「あの、剛くん…」





とある番組の楽屋挨拶に来た後輩がすごく口篭りながら声をかけてきた。





「なん？」



「そのー…これ、うわさ話、ですよ？」





あれか。また僕がAちゃんのこと実は好きでしたーってやつか？それは噂やなくてガチの話やけどな。言わんけど。





「光一君、浮気してるんすか…？」



「ぶーーーーっ」




思わず口に含んだ水を吹き出した。




「なんなんや君は！！そんな噂どっから仕入れてくんねん。

さっきもチラッと会うたときあいつデレデレAちゃんの話しとったで！」



「いや、で、ですよね！！僕も絶対嘘だって思ったんです！！！

…でも…」




また言いにくそうに下を向く後輩。




「なんや。はよ言い」



「…こんな、写真が…今、後輩たちの間で回ってるんです」





そう言って見せてきたのは光一がルカちゃんと店の個室でキスしてる写真だった。暗闇ではあるが、そのピンク髪は絶対ルカちゃんだし、25年以上も一緒にいる僕が間違えるはずがない。相手の男は光一だ。





「この光一くん、顔真っ赤だし…酔っ払った勢いで…」



「……そもそも、なんで、2人で飯行ってんの？」



「ここ、芸能人御用達の個室居酒屋ですよね。でも、ここの個室取るにはかなり顔が知れてないと取れないからたぶん光一君が予約入れたかと…」



「……そんな、わけ…


…っ！！！この写真、Aちゃんは？！」



「わ、分からないですけど、僕ら後輩の中でこれは絶対他に見せちゃいけないって決めて隠しています！」



「…悪い、ちょお電話してくるわ」




スマホを持って非常階段へ向かっていたその時。




「あ、剛さん！」




声をかけてきたのは、ルカちゃんやった。




「……君、なんのつもり？」


「へ？何がですか？」


「あの写真のことや！！」


「写真…あぁ、あれ剛さんまで回っちゃいました？


光一くん、大胆でびっくりしたなぁ。撮られちゃうよって言ったのにかまわんって言って急にキスしてくるんだもん。

大丈夫ですよ。あの写真ならうちの事務所で世間に回るのは止めてもらっ…っっ」





気付けば身体が動いていた。
ルカちゃんの腕を引いて非常階段へと連れていく。

胸ぐらを掴みながら階段の方へルカちゃんの身体を向けた。




「…ふざけてんの？」

▷▷▷→←その20｢ピカイチの話｣

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す