その17「救世主の話」 ページ34
あー、なんでこんな日に限って僕は風邪をひいてしまったんだろう。
コンサートが始まるというのに僕は1週間前から咳が出てて微熱気味が続いていた。毎日検査をしたけど全部陰性で先生からは夏風邪だと鼻で笑われた。なんやねん。おい。
症状は落ち着いたが1週間も休んでいた間は声すらも出なかった。今日は久しぶりの合わせだというのに僕はその後遺症が残り、声が出しにくい。
「おー、剛くん久しぶりやなぁ。
ほんまお前は身体が弱いのぉ」
「…」
「え?なに?なんで何も言い返さんの?」
「光ちゃん煽りすぎや
剛くん、のど飴買うてきたで。そんな無理せんと休みながらやりいよ」
僕らのコンサートのリハ応援に来てくれたAちゃんからのど飴を貰い1つ口の中へ放り投げた。
しかし、1週間分を取り戻すのはかなり難しかった。
音は当たらへんし、声は出ぇへんし。
光一は無理すんなとは言ってくれたけど25周年のコンサートでファンをガッカリさせる訳には行かない。
ほんと、なんで僕はこんなにタイミングが悪いんやろ。
僕のせいで全体が付き合わされてる。きっと呆れてる人もいるんだろう。僕のせいだ。この空気の悪さも全部。
…ん?空気、薄くない……?
「ヒュッ…っ!!」
あか、ん……発作や
そう思った時には既に膝から崩れ落ちていた。
身体が床にたたきつけられる。そう思った瞬間。
いい匂いに僕は包まれた。
そして、冷たくて細いその手が僕の耳を塞ぎそっと自分の胸に僕の頭を押し付けた。
「目…瞑って、私の声だけ聞いて…」
「A……ちゃん……」
「ゆっくり、深呼吸して……」
耳を塞がれてるから脳に直接話しかけられたような気分だ。
自分のとAちゃんの呼吸音が聞こえる。
2つの呼吸音が、ゆっくりと合わさっていく。
「大丈夫……大丈夫…」
その声にゆっくりと僕の意識は遠のいて行った。
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茶(プロフ) - 結城綾さん» 大変遅くなりました!剛くんは次回作できっと幸せになれると思いますのでぜひ新作もよろしくお願いします。 (2023年2月4日 12時) (レス) id: 75867b41bb (このIDを非表示/違反報告)
結城綾(プロフ) - 初めまして、いつも楽しみに読ませていただいてます、剛くん視点で時々切ないヒロインちゃんへの恋心が垣間見えるのがキュンとします、これからも無理ないペースで書いてください、楽しみにしております (2022年10月24日 21時) (レス) @page41 id: c0d3918841 (このIDを非表示/違反報告)
トット(プロフ) - 千香さん» いつもコメントありがとうございます(^^) リアリティを意識して書いてます!笑 感じていただけたなら幸いです(T_T) (2022年9月26日 21時) (レス) id: 0b050a84a6 (このIDを非表示/違反報告)
千香 - 本当に面白いです!なんだか実話にありそうで(笑)剛さん視点なのも良いです!これからも楽しみにしています! (2022年9月26日 19時) (レス) @page26 id: c728a92b9a (このIDを非表示/違反報告)
トット(プロフ) - natsuさん» コメントありがとうございます(^^)natsuさんの楽しみをこれからも作れるように頑張ります! (2022年9月26日 13時) (レス) id: 0b050a84a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茶 x他1人 | 作成日時:2022年9月18日 2時