つよしのネタ帳~光一夫妻のちょっと変わった日常~

その2｢連絡帳の話｣ ページ4

芸能人は連絡帳の登録名で偽名をよく使う。

僕も例外じゃなくたくさんの著名人の番号を頂いてる訳だから安全に管理できるように色々工夫をしているのだ。




Aちゃんは携帯に執着がない。
だから、よく返事が1週間以上返ってこない時がある。
大事な連絡にすぐ気づけるようにと、食事に行く際にはテーブルにスマホを置いて画面が見えるようにしているから、彼女の元へ来る連絡先は向かいに座る僕から丸見えだ。ロックくらいせなあかんやん…。と思っても彼女には面倒くさいらしい。


その日は、2人で食事に来てていつものように彼女はスマホをテーブルの上にポンッと置いた。



｢トイレ行ってくるね｣



｢おん。場所わかる？｣



｢たぶん。｣




方向音痴だから不安だけど、わからなかったら店員に聞けばええし。
個室に1人になった僕は食べ残された刺身に手をつける。

そのとき、ピカっと彼女のスマホの画面が光った。



“こういち”



その名前から電話が来ていた。
だけど、その電話はすぐに切れた。
Aちゃん、光一はそのまんま名前登録してんのやな。でもまぁ、“こういち”なんてそこら中におるから気づかれへんか。




「あんな入り組んだ場所にトイレ作らなくてもええやん」



電話が切れてすぐ彼女はトイレから戻ってきた。



「まぁ雰囲気いい店やから隠したかったのかもしれへんな。


そういや、光一から電話来てたで」


「え、ほんま？なんやろ。あの人今日舞台稽古だったよね。忘れ物かな」



スマホを少し操作した彼女は眉間に皺を寄せて特に電話をかけ直すことも無くスマホをテーブルに置いた。



「かけ直さんくてええの？なんか用事あったんとちゃうん？」


「ん？あぁ、光ちゃんじゃなかったから。」


「あ、ちゃうの？こういちって出てたからあいつかと思っとったわ」



まぁ確かにひらがなで“こういち”ってあったもんな。“光一”ではなく。



「この光一はすぎやまこういちのこういちだよ」


「いや、ビッグすぎて唐揚げ落とすかと思ったわ」


「昔共演してからたまに連絡取ってたんだよね。

それに、光ちゃんはこういちで登録してへんよ笑」


「あ、そうなん？じゃあなに？光ちゃんって入れてんの？」


「ううん。これ。」



彼女が見せてきた画面には


“みぎ”


と書かれていた。

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