つよしのネタ帳~光一夫妻のちょっと変わった日常~

その10「夢の話」 ページ20

Aちゃんは僕らには考えられないほど厳しい英才教育を受けてきている。
番組で話していたのは、常に怒られてきた話だった。自分の手を見て弾く癖のあるAちゃんにお母さんは目隠しをさせて自分音を聞きなさいと指導したらしい。しかし、目を隠されたことで耳が敏感になったAちゃんがその耳で捉えたのは自分の音なんかではなくひたすら怒鳴り続ける母親の声。




それは、大人になった今でも彼女のトラウマになっているらしい。



「…光ちゃん」


「ん？なんや、まだ寝てないん？珍しいな」


「今日、一緒に寝ていい？」


「あぁ……ええよ。」



本番が上手く行かなった日や、ミスをしてしまった日の夜に目を瞑ると、目隠しをさせられた日が蘇る。
夢の中で何度も何度も母親に怒られ続ける。
それにAちゃんは魘される。
そんな日は、普段別々の寝室で眠る2人だがAちゃんが光一の布団で一緒に寝るらしい。そして、普段は朝方に布団に入る光一がまだ外が暗い時間に彼女と2人で寝るらしい。



「大丈夫やで。Aなんかいつも何考えてるかわからん顔してんのやし失敗したことなんか天国のお義母さんも気付いとらんよ」


「なにそれ、ディスってんの？あとうちの母親かてプロやから」


「ええか。プロってのは上手い人を言うんじゃなくて、何かミスをした時に顔に出さないことを言うんやで」


「ふふっ、そこら辺は光ちゃんプロやなぁ？どんなミスしても顔に出さへんもんな？」


「お前こそディスってるやろ」



光一に腕枕されながら頭を撫でてもらっていればAちゃんは自然と眠りにつき、その日はもう怒られる夢を見ることは無いんだとか。



「安心しぃ。何があっても俺がおるから」

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